音楽あふれる からの、しあわせいっぱい からの、切ない…小瓶。
つまりはなかなかのカオスだ。
おつきあいいただけるのならば。
年が明けてすっかりあたらしくなった空も、随分馴染んできました。
もう少しで、高一最後の行事・合唱コンクールがあります。
私は伴奏を弾くことになりました。というより、名乗り出てみました。
もともと、学校行事によくある みんな(あたしたちの仲間)頑張ろー‼︎思い出つくろ‼︎ っていう雰囲気が苦手で、いままでならばきっとやらなかった。
だけど、うまれてはじめて、すき というか、ほんのすこしかもしれないけれどこころの何処かが確かに重なった。(随分まえの小瓶に書きましたね〜)そう思えるひとに出逢えた、このクラスは私にとってとくべつで、大切で。
じぶんのいちばんだいすきな、ピアノを弾こうとおもいました。
私は、ピアノを弾く時がいちばんしあわせなんです。音楽がこころにあふれて、そのときだけは まっすぐになれる、気もします。
役に立ちたい! そう 可愛く言えるほど私は素直ではない。
ただ、このひとたちの記憶に こころに、すみっこでいいから住んでいたいと、急にそんなこともひりひりと、おもいました。
冬休み中練習をして。
弾くたびに大切なひとの、顔が声が聞こえて。あーあ、この行事が最後なんだなあ。初めてだ、そんなことをかなしく感じたの。
学校がはじまった。
さすがは バリバリの進学校のくせにとてつもなく行事に力を入れる我が高校。初日に全体練習をするや、放課後、朝練も始まりました。
最初の練習、放課後のホール。
部活は早めに終われる外練だったので、ピアノを使える練習時間にはなんとか間に合いました。
その建物に、入ったとたん、
ストウブの暖かさと、
だいすきなひとたちの私の名を呼ぶ声が。
寒いなかを走り込んでたからかな。
涙がでそうになったの。
なかには、人数は少ないものの、パートごとにわかれて歌っているクラスのみなさん。
わあっ。ちゃんと、たのしそうにやってる。
おもいながら、ちょっと手持ち無沙汰、かじかんだ指をほぐしながらピアノを探そうとすると、
あ、良い音。
ピアノを誰かが弾き始めました。
音 そのものが、しみじみとうつくしい。悲愴 の第一楽章かな? ひとつひとつの音が生きていて、思わずほうっと吐息が。
そちらを向くと、
片想いの、あなたがいました。
ピアノを弾くことは知っていて、その話で盛り上がってきて、
だけど聴くのは初めてだったあなたの音。
めっちゃすきだ。
あなたが弾いているのに気づかぬうちにそう思える、音色でした。
話すことは下手で 辛い記憶に取り込まれてしまうこともあって、でも私とは似ているようで全然違う、すごく澄んでいる感じのする。そんなあなたの音は、つよい のに 驚くほど甘やかで繊細な こころを惹きつける、音楽でした。
同じピアノで演奏しても、どうしたってそのひとの音 になる。だから、いつか聴いてみたかったの。叶った。
こちらに気づいてくれたけど、続けてって言ったら もう少し弾いてくれて、私は思わず一緒に歌っていた。
綺麗な手だった。ピアノを弾く、手だった。
私は、どんな音を紡いでいるのかなあ。
すでにしあわせいっぱいな私でしたが、練習はここからで。
各パートが音合わせに来るんだけど、これ、たのしいの! なんでかというと、ピアノを囲んで歌うから、音が合ってくるとふわぁって、綺麗な響きで包みこまれるんです。
…今、ふと、ひと に囲まれる状況がこわくなかったそのときの私におどろいた。進歩、だよね。やっぱりだいすきなピアノのおかげかな。
なんども伴奏や メロディを弾きながら、
歌うみんなを目に焼き付けていた。
はじめに こころが重なった、といったひとたち。変なノリでみんなを盛り上げたり、しずかな笑顔で歌っていたり。指揮者の彼は、…しっかりものというか、八割の善意と二割のぶっ飛んだなにか ←あるひとの例え。すごくぴったりくる でできたひと。…いつもどおり、ヘンテコだけどちゃんと私の音を聴いてくれている。
彼らの、そのなかにじぶんがいることを、奇跡だとおもった。
別に群れたかったわけじゃないよ。だいすきな、彼らだから。
とてもうれしくて、この瞬間は想い出になっても私をあたためてくれるんだろうな、またそうおもいながら、
すごくすごく、泣きたくなった。
あたりまえみたいにここにいること。クラスが変われば、時が経てば、幻のようにあっという間に、消えてしまうのだろう。私にとって奇跡みたいなこの瞬間も、私にとって、なだけなんだろう。
まえには 私がぜんぶおぼえているから、それで十分だからとおもっていたのに、
それがとても、痛くて痛くて。
仲良しなクラスメイト。
なんて、近いようで遠い。
そう思うのは、深い付き合いを避けるようになって 環境の変わるたびぜんぶリセットしてきた、からなのかな。
練習を終えて教室へ帰る。
寒い寒い廊下。
痛い痛いこのきもちを話すことはないだろう。
いまはただ、一瞬でもこちらをみてくれた大切な背中を、祈るみたいにみつめている。
片想いのあなた。
前の小瓶に書いた、ほんのすこしだけでもこころが重なった記憶があなたのなかに生きていてくれたら。その想いは変わりません。
ただ、そうして隣で、ことばはなくとも優しいきもちで歩いていられる、この時間がずうっと続けば良いのに。
いまが私にとって、ピークなんだ。すき なんて言ったなら、こうやって穏やかにただ、同じ時間のなかにいることができないことは、なんとなくわかっているの。
こんなになんども伴奏を弾いたのに、いま私の頭の中で響いている音は、あなたのピアノなんだなあ。
さて。
魔法が解けてしまうまえに。あしたも練習たのしもう。
私もなにかほかの曲を聴いてほしいな。いちばんすきな、取って置きの。
…辛いばかりのいままでの人生で、いちばんすきな世界に来られたのにこんなにも痛いのは、どうしてですか。