はじめに、この小瓶を見つけてくれたあなた様に格別の感謝を。
ほんの数十秒でかまいませんので、
このとりとめのない話を聞いていただければ幸いです。
唐突ですが、この頃
「私は座敷童子じゃないかな?」と思うことがあります。
三十路手前の中年予備軍が何を言ってるのか。
そう思うでしょう?
座敷童子というと日本由来の都市伝説。子供の姿をした付喪神。三十路手前とは程遠い存在…()
色々な伝承があり私も正確なことは分かりませんが、特によく聞くのはこの一説。
「座敷童子がいる家は栄える。
一方で童子が出ていくと不幸になる。」
もうお気づきでしょうか。
そうです、私の半生がまさにそのようなものだったのです。
あと少しだけ、お耳を貸してください。
いや、この場合は目でしょうか。
幼い頃、私は両親から嫌われて育ちました。
父と母の仲は良かったのですが、
どちらも子供が嫌いだったので、
今で言うところのネグレクトを受けていました。
時折、暴力も振るわれましたが、
当時の私にとっては親に構ってもらえる唯一の貴重な時間でした。
やがて私は10歳になる前に他所へ預けられることに。
たった一度だけ再会した、母だった女性が言うことには、
「お前が出て行った数日後、父親の不倫と借金が発覚し差し押さえに遭った。父親は不倫相手と出て行った」
その時には、彼女の事はもう他人だと思っていたので、今更なんだ、という話で聞き流していました。
金をせびられましたが、弁護士の知り合いに助言を得て逆に当時の時効になっていない虐待について慰謝料を取りました。
正直なあなあで事が進み、私自身お金にも困っていなかったので、その慰謝料はお世話になってきた方々へ寄贈しました。
そこから、おかしいことは続きます。
その後、私は一人暮らし・ルームシェアを始め、転々と住まいを変えたのですが、
私が出ていくと、1月以内に前の住まいで何かしらの不幸が起きます。
火事、半壊、漏電、空き巣、元同居人の病気…
それまで一度も起こらなかったことです。
特にオチはありません。
単に私の悪運が強いというだけなのかもしれませんね。
今はとても住み良い田舎で過ごしています。
いずれこの情勢が落ち着いたら、
今度は思い切って憧れの都会暮らしに踏み出そうかと考えておりますが、
どうかその時だれも不幸になりませんように。
そして最後まで聴いてくださったあなた様に
今後、格別の幸せが訪れますように。