おじいちゃんへ。
元気?
おばあちゃんと仲良くしてる?(笑)
おじいちゃんがそっちに行って何年になるんだろう?って考えたら…
おばあちゃんが亡くなった時の父の年齢になっていたよ(笑)
うわぁ~!やね(笑)
父がさ、知っているやろけど…悪性リンパ腫やん?
で、薬の副作用で髪の毛が抜けるからって、ツルツルに剃っちゃって、このあいだ父に会った時、
「うわぁ~!おじいちゃんに似てる~!」
って言ってしまった(笑)
父とおじいちゃん、本当の親子じゃないのにね。
父はおじいちゃんのお兄さんの子供。
おばあちゃんとの間に子供が出来なかったから、おじいちゃんのお兄さんから養子を迎えた。
それが、父。
本当のおじいちゃんとおばあちゃんに一度だけ会ったことあるよね?
おじいちゃんの故郷に行った時にいた、頑固そうなおじいさん、そのそばで寄り添い、時に我儘をたしなめるおばあさん。
その時はな~んにも思わなかった。
だってさ、今でも、私は、おじいちゃんとおばあちゃんは、一緒に暮らした、桜の季節に動物園に一緒に行った、いつも時代劇を一緒に見た、おじいちゃんとおばあちゃんだけだと思っているから。
あのね、おじいちゃん。
おじいちゃんが絶対長生きして見る!って言っていたひ孫である息子が、電車の運転手になりたい!って言っているんだ。
おじいちゃん、市電の運転手で、路面電車運転していたんだってね。
だからかな?
私は路面電車が大好きだし、息子は電車が大好き。
このあいだ、実家に帰った時に、息子が大好きな電車の運転手さん捕まえて、
「ぼく、ここのうんてんしゅになりたい!」
なんて宣言していた。
子供の夢だから長続きしないかもしれない。
でも、もし、ずーっとずーっとその夢を温めて、目指していくなら…
応援してくれる?
この手紙書き始めたのはね、このあいだ私が大切にしていたけど、もう使わないから、必要な人のもとに譲ろうと思って、オークションに出して繋がった相手が住んでいる場所が、おじいちゃんの実家の近くだった。
これも運命だな~!
いや、しばらく墓参りに行ってないから、ひ孫達を連れて来い!ってことかな?(笑)
静かな静かな、町。
私の実家とは全く違う、大きなスーパーも、コンビニも、電車も走ってない、町。
あの町からおじいちゃん、飛び出したんだね。
死んでから、家出したって聞いた。
それが次男だからなのか、家が、町が気に入らなくて飛び出したのか分からないけど…
何となく、私の性格から考えて(笑)気に入らなくて飛び出したような気がする。
新しいものを見たかったから。
あの町で終わりたくなかったから。
そして、おばあちゃんと、当時じゃ珍しい、恋愛結婚。
おばあちゃん、日舞の師範で、とっても作法に厳しかったけど、芸者さんだったんだってね、
固いおじいちゃんから想像できなかったけど…
でも恋をして…時代劇だけなのかな?身請け、したのかな?
だから、おばあちゃんは本当のおばあちゃんからいびられたんでしょ?
だから、子供が産めないんだ、って。
でもさ、あのおばあちゃんはきっと筋を通す人だったと思う。
日舞の延長で、誰かに見てもらいたかったから、なったんじゃないかと思う。
だからさ、きっと、きっと、芸者だから、どーのこーの…ってこと無かった気がするんだ。
あのおばあちゃんのこと、そういうお客さん、突っぱねたんじゃない?(笑)
ただ、おばあちゃんが心臓が悪かったから産めなかっただけ、だと思うんだ。
だから、おじいちゃんはおばあちゃんを守るために、実家から分家という形をとって、距離を置いた。
だからさ、私は、父の本当の兄弟のことや、私のいとこのことを知らない。
でも、おばあちゃんのためだったんだもん。
あの無口で、不器用なおじいちゃんが、おばあちゃんにしてあげられることはそれだけだったんだもん。
おじいちゃんが見たかったひ孫達はすくすく育っているよ。
どっか、おじいちゃんの頑固さと不器用さを持っている。
さっきも書いたけど…
もし息子がおじいちゃんと同じ仕事に就きたいって思い続けるなら、導いてくれる?
私も、私なりに息子を応援するけどね。
そっちで元気で…おばあちゃんとあまり喧嘩せずに…あっ、でも喧嘩するほど仲が良いとも言うか(笑)…見守ってて。
相変わらず不器用で、転んでばかりだけど…(笑)
また、手紙書くね。
おじいちゃんへ。
貴方の孫より。