拝啓、3年前の僕へ。
高校に入学してから、この手の小瓶を数回流した気がします。
インターネットという海を流れる小瓶が過去に届くわけがないのを分かってはいるのですが、どうしても流さずにはいられないのです。
お元気ですか。そんな訳ありませんよね。
体調を崩している状態というやつにようやく慣れてきた頃ではないでしょうか。
僕も元気ではありません。
満足に眠れない夜の明け方、この小瓶を書いています。
君は今、辛い状況の真っ只中にいます。
これから、もっともっと辛い状況に足を取られて、身体が呑み込まれていくのです。
誰かのため、と思って頑張ってきました。
期待に応えるために、不安や不満を全部押し込めてきました。
逃げられないと思い込んでいたから、何度も何度も自分を傷つけてきました。
まだできる、大丈夫と、何重にも嘘をつき重ねました。
そうして、ボロボロになってしまっても、
「誰か」は僕に手を差し伸べてはくれませんでした。
他人のことなんて考えずに、
体裁なんて考えずに、
逃げ出してしまえばよかったのです。
逃げなさい、今すぐ。
学校なんて行かなくていい。
傷つかないなら、無理をしないなら、
それでいいから、逃げてください。
そう、伝えられたらどんなにいいだろう。
ちょうど一年ほど前、そう呼ぶべきなのかよくわかりませんが、自殺未遂というものをしました。
これから君が体験するであろう、嫌なことが夢の中で突然フラッシュバックして、発作的に死にたくなったのです。
手首をボロボロにして、遺書を書いて、
死のうと思って薬を40錠ほど飲んだところで、死ねなかったら胃洗浄・尿カテで、家族に迷惑をかけてしまうと思ったら、
それがどうしようもなく恥ずかしいことに思えて、怖くなって中断して学校に行きました。
2日も続けてそんなことをやった上に、学校では体調が悪くなって、親に迎えに来てもらう始末だったので、
薬は取り上げられ、死ぬことが難しくなってしまいました。
今年の文化祭は、休みました。
今までなら、無理をして参加していただろうから、これは進歩なのかもしれません。
何度も嫌だと言ったのに、準備には強制的に参加させられました。
あとで聞いたら、昨年の文化祭での功績を理由にでもしたのでしょうか、担任の推薦で大変な役割に就かされたのです。
そのことは僕にとって、利用されているとしか感じられませんでした。
先生が、他の先生方から評価を得るために、僕を利用した。
わかっています、そんなことがあるはずはないのです。
けれど、中1のあのことを思い出して、
やはり僕は利用されたのだと、
そう思ったら哀しくて哀しくて口惜しくて。
両方の腕に赤い華が咲きました。
自分は馬鹿だと思います。
カウンセリングの先生にも言われましたが、僕はあの頃からちっとも変わっちゃいないのです。
今の環境は、とても恵まれていると思います。
本当に、本当に恵まれています。
しかし、中学の頃の嫌な記憶を重ねてしまうせいで、その恵まれた環境が辛くて辛くて仕方が無いのです。
逃げ出してしまいたい。
苦しい。苦しい苦しい苦しい。
身近な誰かに、この感情をぶつけてしまいたい気がします。
でも、ぶつけられた誰かは、きっと困ってしまうから難しいのです。
だから、お道化で頑張るしかないのです。
少し眠って、勉強をしようと思います。
もう、受験勉強を始めなければいけない時期です。
月日が経つのは早いものですね。
僕の中の時間は、あの頃のままだというのに。
過去を見ても、現在を見ても、未来を見ても苦しくて辛くて自信がなくなるだけだから、
目の前にあることを一つひとつ丁寧にこなして、何も見なくていいくらい忙しくするしかなさそうです。
では。また冬頃に気が向いたら君宛てに小瓶を流そうと思います。
届くわけがありませんが。
夜が明けてしまいました。
家の前の工事もだいぶ進みましたよ。