私は他人から言わせると「渋谷で遊んでそうな子」に見える、らしい。確かに渋谷にはよく行くけれど、好きなのかと言われるとそうでもない。絡む人達が遊び場所をそこに設定するからで、私一人でも行きたい、とは特段思わないのだ(見た目に気を使っているのは、単にダサいのが嫌いなだけだ)。
デートとか行くんだったら。勿論渋谷原宿だっていい。嫌いじゃないから。でも私は、廃墟とか、博物館とか、神社とか、あてもなくフラフラしたりとか、そういう所にも行ってみたい。そういう事もしてみたい。専門的で深い知識なぞは全く持っていないけれど、ロマンと神秘の宝箱の淵にでも触ってみたいと思うのは、いけない事だろうか。
以前、一度、聡明そうな彼と付き合ったことがある。勉強が得意で、どちらかと言うと目立たないタイプの男の子だ。それまでの彼氏とは、正反対の性質だった。だからこそ、逆に嬉しかった。流行りの映画を見たり、自撮りに時間を費やしてろくなお喋りすらしなかったり、そんなデートばかりではなくなるのかも、と。
しかしこの予想は大いに外れた。彼は、私という理想像を作って、憧れていたのだ。つまるところ、「渋谷で遊んでそうな子」な私と付き合えば、同等に成り上がれると思っていたらしい。彼は、渋谷原宿で高校生向けのスイーツを食べたり、インスタにあげる自撮りを撮ったり、そういうデートをしたがった。そういうデートだけをしたがった。なんだかとても居た堪れなかった。だって彼はどこからどう見ても「渋谷で遊んでそうな子」には見えないから。
私の側にいれば、勝手に魔法がかかると思い込んでいたのだ。だから自分から見た目や言動を変える努力はしなかった。着古したチェックのパーカーを着て、縁のない眼鏡をかけて、初めてのスタバにはしゃいでる姿を見て、私は器が狭いもので、軽蔑の念を覚えた。可愛いとは到底思えなかった。低俗で、不快で、なんて小汚い奴だろうと心の中で罵った。結局その彼とは長く続かなかった。
「こんな子だと思わなかった」。よく言われる言葉。神社や廃墟や博物館は貴方には似合わないんだから、と嘲笑される。時にはそれで落胆も。そして喧騒の中に放り込まれて、じゃあ何する?とそこは人任せで。
だから私は、一人で冒険に出かけるのだ。誰もいない静かな場所で、下品に笑いながら街を歩く自分を、噛み締めながら殺していく。リセットする感覚に近い。下品な自分が嫌いな訳ではない。ただ、いつもそれだと疲れるだけだ。私の本質は多分こっちに置いてある。
率直なところ、あーあ、誰か一緒に洞窟探検してくれねーかなー!!!!って感じである。終わり。