今日モールで見たのは本当にあなただったの?
一瞬だった。あなたがいた、と思ったのだけれど定かじゃない。1秒2秒見て、目を伏せた。誰といるかを見たくなかった。もし目が合ったら挨拶するしかなくなると一瞬で思った。 誰かといるなら挨拶したくなかった。あなたが彼女といる時に同じ空間にいることがどれだけ苦痛だったか私の体は憶えているようだった。
でもなぜか普段その苦しい記憶は消えて、あなたがどういうふうに私に近づいたかだけを思い出す。
大勢の人がいるときに、そっと目を合わせて見つめ合ったり。話すときにはキスするくらい近い距離を保ったり。耳元で内緒話をされたり。
何かと理由を作っては側に来て、体が触れるか触れないかの距離にいたがったあなたも、私に惹かれていたよね。
一度キスすれば恋に落ちるっていう歌も。
戯れだったんだろうけれど。もう一度あなたの側に行きたい。あなたの体温を感じたい。