こんなあたしを好きになってくれるのはなんで?あたしはきみの十分な推しになれてる?とか卑屈になって聞いてみても、いいことにならないことくらいは分かるから、言わない。あなたに嫌われたくないから、言わないから、言わないことで、今まで通りのあたしを楽しんで欲しい、おちゃめで調子乗ってて失敗ばかりするあたしを。あたしはあなたにファンサをするので、あなたは承認というひかりをあたしに注いでくれたら、お互いこれ以上ない幸せだ。あたしの人生にはそんなに真っ直ぐ慕ってくれる目なんてかつて存在しなかったものだから、先輩であるあたしが君相手に、なんて情けないことだ!って感じなんだけれど、あたしは君にせいいっぱい関心というファンサをしてあげるし、だからあたしにも君のことをひそかに神聖視させて。君はまっすぐな女の子なのに、何をどうまかり間違ったらこんなあたしをそんなに好いてくれるの?あたしはそんなに器量も良くないし頼り甲斐もないしヘラヘラおどおどしてるだけの人間だよ?って聞くのは、さっきも言った通り無粋で無様で詮無いことだからしないし、そもそもあたしがこんなことを考えていることを知ったら君は引いてしまうだろうから、ずっと秘めておくから、君の憧れの人でいられるように頑張るから、どうかあたしのことをその瞳に映させていて欲しい、あたしはそれだけを君に願う。たとえば今日君があたしの元へ真っ先に駆け寄ってきて懸命にあたしとの思い出を作ろうとしたように、あたしはきみの1番でいたい。あたしはそれに懸命に応えたい、そうすることで、君の記憶に焼きつきたい。でも誰かの一番であることに飢えているあたしは君じゃなくてもいいのかもしれない。それってとても自己中心的で、君にとっては悲しいことなのだろうか。あたしの全細胞が「あたしを見て!」と泣きながら主張していて痛くて、だからきっと君みたいな子に執着してしまうんだ、ごめんね、でもそんな言葉よりもきっと、君にはありがとうと言った方がファンサになるのかな。君をあたしの心の拠り所にしようとしてるあたしが浅ましくって、でも止められない。あたしは君を利用しようとしてるだけのサイコパスかもしれない。あたしは君からの好意を持て余してしまってこうしてここに書き付けているよ、ねえ、君の打算がない、いちファンとしてただ願いを叶えようと行動するその輝きが私にとってどれだけかがやかしくて尊く映るものかなんて想像もつかないでしょう。あなたのその真っ直ぐにあたしを全肯定してしまう言葉がどれだけあたしを舞い上がらせるかなんて考えたことすらないでしょう。これは世間一般で言う恋ではない。恋ではないけれど、恋に似た感情の昂りが脳内伝達物質によって引き起こされていることは確かだった。あたしのいう恋らしきものに性別なんて関係ない、恋なんてお互いの欲望やコンプレックスを満たすための、磁力のようなものでしかないのだ。白状しよう、あたしは君に欲情している。あたしのあたしだけの情欲と定義づけられたある欠乏感があたしの矢印をあなたに向けさせてしまうのだ。君の純粋な瞳に当てられてしまって、あたしは若いファンの子をワンチャン狙う性欲モンスター一歩手前も同然である。君が眩しい。君に抱きつきたい。君に肯定されたい。あたしは君のように純粋じゃないからひどくほしがってばかりで、だからこの関係は君のあたしへの好意以外には成り立ちえない。だからあたしは誓って君にこの感情を漏らしたりなんかしない。あたしは君の推し、そしてきっと君にとっての1番はあたしじゃないことくらいはわかるから、でも、まるで1番であるかのような妄想くらいはさせて。