夏の匂い。
歩くたびにふわりと匂いがする。
雲ひとつない空を見上げ一息つく。
ジリジリとした光が照り付け、蝉の合唱はどこまでも響く。
今日も地球は生き生きとしている。
川の水面に光が反射し、きらりきらりと煌めいている。
水面を勢いよくかけるトンボ。
トンボの目が光を反射する。
透き通るような真っ青な目はまるで夏の夜空の星々を閉じ込めたような光を秘めている。
トンボはゆっくりと上昇していく。
高く高く、青い空へと向かって行く。
空に登ったトンボは速く、美しい動きで私の元から去った。
トンボとはお別れだ。
川辺を歩いていると、一羽の白い鳥を見つけた。
歩く足を止め、鳥を見る。
次の瞬間、鳥はその大きな翼を広げ、青空に向かって羽ばたいて行く。
どこまでも、飛んで行く。
一瞬、夏の蒸し暑さが飛んで行く。
爽やかな風が頬を撫でる。
川の魚がポチャン、と跳ねて再び泳ぐ。
辺りをふと見てみると、もう夕暮れ。
息を呑むほど美しい夏みかんのような色の空が広がっていた。