今日は私の命日。三年間の私は、今日死んだ。
記念すべき卒業式。私は高校が大嫌いだった。他校の子からも「あんたのとこクズすぎない?」と言われる程酷い高校であった。偏差値は中の下、地味で卑屈で意地悪で、なのに他人に縋りつきたがりで、いじめられっ子気質の奴らが沢山いた。例にもれなく、教師も全員クズだった。全然接点のない生徒に交際を持ちかける先生がいるくらいだから。
そんな地獄に放り込まれた私は、みるみる腐っていった。腐っていくのが自分でも分かった。笑いは固くなり、他人への思いやりを忘れ、攻撃的にはしゃぐようになった。
生徒会長をやらされた。教師の仕事を代わりにやった。教師はそれを自分達の手柄にした。鬱になりそうな程働かされて、見返りは何にもなかった。生徒達からは「推薦狙いでなったんだろ」と考えてもみなかった事を言われた。
やらされた、うん、ちょっと違うかも。自分からやったのかも知れない。大好きな中学校、大好きな人がいた。生徒会長だった。同じ景色を見たいと思ってなってみたけれど、取り巻く人が違うんだから、見える世界だって違うってことを忘れていたのだ。
気が強いのが災いして、いじめの主犯にされたこともあった。何にもしていないのに「悪口言われた」と担任にチクった大人しい女の子。私が何度勘違いだと弁明しても、担任は聞く耳を持たなかった。「お前は強いから、弱い奴の気持ちがわからないんだ」この言葉を私は一生忘れないだろう。中学の時の恩師には、お前は弱くて心配だとずっと言われていたのにね。
気持ち悪い男子にまとわりつかれたり、どうでもいい男子に利用されたりもした。やり返してやったけど。オタクだったら静かにしていてほしい。ストーカーってこうやって生まれるのだと理解できた。
全てが嫌だった。グループの中心にいたけれど、それは私とは違う私だったから。家に帰るとどっと疲れて、何やってるんだろうって死にたくなる毎日。大声で騒ぎ立てて、何が楽しかったんだろうって恥ずかしくなる毎日。それが、今日で終わりなのだと、本当に、嬉しくて。
「在校生からの言葉」が、前年私が書いた答辞そのまんま丸パクだったり、うざい中国人デブに大きい態度とられたり、散々な卒業式だったけれど、もう、もう全部殺せるんだって思ったら。
雨の中傘もささずにスキップして帰った。高層マンションの最上階で、空を見る。もう真っ暗で何も見えないけれど。第1ボタンをぶちりとちぎり取って、思いっきりぶん投げた。私は死んだのだ。さようなら、三年間の自分。今までご苦労様。明日からは私がいるから、もうゆっくりおやすみ。