きっかけはポイントサイト。
条件満たしたらポイント進呈ってやつね。
とあるゲームアプリをダウンロードして、遊び始めた。
課金なしでも、条件は満たせると事前に調べてあった。
毎日コツコツレベル上げして、課金せずに条件達成。
ポイント貰えて無事終了!
さっさとアンストアンスト~
……しとけば良かったんだよね~。
今になって思えば。
でも、後悔先立たず。
もう遅かった。
既にそのゲームが楽しくなってしまっていて、
毎日時間を見つけてはログインするのが日課に。
その時点ではまだ課金はしていなかった。
課金には抵抗があった。
いつサ終するかわからないゲームにお金を払うのは
博打というか、かなりの無駄遣いという気がして。
でも、毎日毎日そのゲームをしているうちに、
だんだんストレスがたまってくる。
はじめはどんどん上がっていたレベルが全然上がらなくなってくる。
イベントは消化不足で終わり、ガチャもなかなか渋い結果のまま。
課金している人たちはイベントを完走し、
強いキャラを手に入れて、更に強化していく。
差があっという間に開いていく。
分かってたことなんだけどね。無課金選んだ時点で。
でも、もどかしい思いは日々蓄積していき、とうとうその日、
初の課金をしてしまった。
金額にしたら数百円。
でも、これが地獄の始まり。
はじめはわずかなひび割れが、
時間と共にどんどん広がっていくように、
そこから漏れ出した水がどんどん嵩を増していくように、
課金額は確実に増えていった。
我ながらやばい、もうやめないとやばい、
そう思ってもお金をつぎ込んでしまう。
一旦課金で強くなってしまうと、そこからレベルを下げるのが苦痛になる。
課金し続けないと、あっという間にランクが転落する。
そういう風にゲームが設計されているのだ。
ゲーム会社として当然のことだ。商売なんだから。
課金させるために、ありとあらゆる手段を打っているんだ。
その手法に、まんまと嵌ってしまった。
分かっていながら、お金を出してしまう。
ただのデジタルデータのために。
このお金があれば、もっと他のものが買えるのに。
ゲームしてても、楽しくない、でもしないではいられない。
お金を払ってもストレスは増すばかり。
自分にとっては大きな金額でも、ゲーム内では微々たるもの。
重課金者はこんなもんじゃない、つまり自分は絶対にトップには行けない。
なのにやめられない…。
クレジットカードの明細を見るのが苦痛になってくる。
自分の愚かさを、数字で突きつけられる。
インターネットで「アプリ課金」で検索した。
似たような事例が出てくる。
数百万借金した人もいるらしい。
数百万…
ちょっと前までは他人事だった、でも今となっては未来の自分かもしれない。
なぜなら、なけなしの自分の貯金に手を付けようとしていたから。
してもいいかなと思いだしていた。
止めるにはもう、アプリをアンストするしかない。
でも、お金を、時間を、かなり自分としては注いでしまった。
惜しい。これを、手放すのが。
でも、このままでは貯金が全滅して、借金にすら手を出してしまうかもしれない。
してもかまわないと、どこかで自分が思っているのがわかる。
してしまうだろう、このままだと。
ああ、でもでも、せっかくここまでランクを上げたのに。
毎日葛藤しながら、課金を続け、ログインし続けた。
とりあえず、あともう10万は使っちゃおう、
そう思っていた。
でも、ふ、と、
「アンストしよう」
そう、思考が浮かび上がってきた。
何だったんだろう。
自分でもよくわからないけど、やめないと本当に地獄に足を踏み入れる、
望まない現実に突入する、その狭間にいたのは確か。
でもやめられずにいたところに、一本のロープが投げ入れられるように、
浮かんできた思考。
これを逃したら後はない、必死でしがみつくように、
スマホを握り、アプリをタップし、アンストした。
……。
涙が出てきた。少し。
まだ、課金した分使い切ってない。
まだガチャが引けたのに。
あそこまで強くしたのに。
アンスト直後は後悔の方が大きかった。
でもその日、久しぶりに安眠できた。
ゲームのために、睡眠時間を削り、生活リズムも乱れていた。
ゲーム内の人間関係にも疲れていた。
そんな日々から解放されたのだった。
そのゲームをアンストしてから、1年以上が経つ。
あれ以来、アプリゲームからは距離を置いている。
自分には向いていないと、身に染みたから。
もうあんな地獄は味わいたくない。
無課金では楽しめないし、
重課金を続けられるほどお金がない。
それが自分だった。
勉強代は安くはなかったけど、もう繰り返さない。
時間にもお金にも、何より気持ちに余裕ができた。
抜け出せて、本当に良かった。
とあるアプリの課金沼に嵌りかけた話でした。