「油断したら駄目だよ、ノマド」
瞬く間にA国の兵が地面へと伏せる。
紅が地面に広がっていく。
命を救ってくれた恩人に瞳を向ける。
暗い、深海の様な、掴み所の無い瞳をしている。
カーテンが掛かったかの様に何も見えないこの瞳が嫌いだ。
ノマド「あ、ありがとう、、、”ペル先生”」
ペル「礼には及ばないよ、、、だけど、戦闘に不向きな僕が此奴の事やれるとは思わなかったわ」
A国の兵を刺したであろうナイフをクルクルと掌の中で回しながらペル先生がヘラっと笑う。
また笑って何かを隠そうとする。
ファング「ノマドッ、、、!大丈夫だったか?!」
A国の兵を片付けたファングが俺の方へ駆け付けて来る。
ノマド「ファング、ごめん心配掛けた」
ファング「本当だよ、、、ノマドに何かあったら、」
言葉を紡ごうとするファングが言葉を詰まらせる。
ファングの瞳を覗くと薄い膜が張ってある。
ノマド「だ、大丈夫?ご、ごめん、、、そこ迄心配させちゃって、、、」
ファング「だっ、大丈夫だから、、、大丈夫」
そっとペル先生の方を見ると、つまらなさそうにA国の兵の顔を弄っている。
俺の視線に気付くとペル先生は微笑を浮かべて俺に言う。
ペル「此奴、未だ生きてるみたいやわ」