俺は父親と普通の会話がしたかった。ただ父さんと親しく思いたかった。
だというのに、なんだ。あのぼんくらは散々俺自身を無視した、ただ成績やら成果しか興味がなかった。
そしてそれが自分の意に添わなければ散々罵倒して俺を傷つけた。俺を認めなかった。
何一つ認めなかったくせに!!
もっと許せないのは俺を思い出させようとした試みが全て無駄だったことだ。
赦そうとした俺が馬鹿だったよ。
あの時の言葉に傷ついたと言ったら、あの父親はなんと答えたか。
「覚えてない、言ったとしてもそう言わせたお前が悪い」
お前が、悪い!?!?!?
本当に殺してやろうか!?てめえの肩書と実績がどれだけ立派だろうが、
俺の憎悪と憤怒から逃れられると思っているのか、死んだらそれでおしまいなんだよ。
いつでも奪えたんだ、それをしなかったのはただリスクがあるからだ。
父親だからじゃない、子供だからじゃない。
単純に利益よりも損失がでかいからだ、わかるか?
重要なのは今だ。だから手を伸ばしてチャンスを作った。
なのにあの老いぼれは顔をそむけた。それどころか不誠実に言い逃れをした。
今俺が怒って泣いているのは、それだよ。
過去の罪を赦そうとしても、お前の不誠実が俺の怒りを呼び起こすんだ。
俺が父の命を奪わないのは、単純に今の世の中で許されないからだよ。
法律を勉強したら笑える話があったんだ。
親が子供を殺した罪よりも子供が親を殺した罪のほうがずっと重いんだ。
笑ったよ、同じ命なのにな。
俺は望んでいるんだ。天秤の傾きをただすのをさ。負債をなくしたいんだ。
あいつが俺を苦しめた分だけ、あいつが重ねた不誠実の数だけ、ひどく傾いているんだ。
俺の心は悲鳴を上げている、俺の脳はあいつの言葉が反響している。
その時が来たら、あの老いぼれが命乞いしても、泣き叫んでも、俺は笑ってかき消してやる。
目の前で負債がなくなるのを見たいんだ。父親が苦しんで泣き叫ぶさまをこの目で見てやる。そしてあざ笑ってやる。
もう手遅れなんだよ、俺の父親はただ俺自身を見て話をすればよかったんだ。
なのに俺を見捨てた、自分の子供を幾度となく心無い言葉で傷つけてきた。
今俺が望んでいるのは、あいつが死ぬことだ。あいつの肩書も実績も知ったことではない。
そのすべてを金に換えてやる。その金で俺は好き勝手させてもらう。
金しか興味ないだよ。あいつが俺の成績しか興味がなかったようにな。
だからコロナにでも白血病でもなんでもいい、とっと病に伏せて死ぬがいいさって望んでいる。
メメントモリさ、死んでしまったら肩書も実績も金も持っていけない。
あいつの大事にしている物で金にならないなら棺桶に詰め込んで諸共焼いてもらおう。
金になるなら売り払って乾杯してやる、大層なガラクタがあるのは知っているんだ。
真っ当に子供を育てればよかったんだよ、親父。
なのに、子供を愛さずに傷つけた。
育ったのは辛抱強い悪魔さ、憎悪と怒りを胸に秘めて、無表情と笑顔の仮面をかぶり、善人の装いとふるまいを身に着けている。
負債は積みあがっている、利子は天井知らずに跳ね上がっている。
いつでも殺せたが、殺さなかった。金にならないからな。
死のうと思ったが、死ななかった。金にならないからな。
その時が早く来ないか、俺は望んでいるんだ。
仮面をかなぐり捨て、あいつの全てを金に換えてやるその時をね。