茜視点
僕に休む時間はない。なぜなら、僕は弟や妹の面倒を、学校以外はずっと見てなくちゃいけないから。
僕は長男で、弟や妹が4人いる。上から順番に、維斗(男・小5)・霞(女・小2)・瑠璃(男・小1)・雪菜(女・年中)。霞から下は、お母さんの再婚相手の子供。
お母さんの再婚相手はいわゆる「ひも」で、女遊びに夢中だ。だから、お母さんはずっと仕事をしている。その分、家事・育児は僕の仕事なのだ。
遊ぶ時間なんてない。小学生時代、遊びに誘われてもことごとく断っていたから、クラスでも浮いていた。今は中学生なのだが、受験するお金もないので地元の公立のとこに通ってる。だから、今も浮いている。でも、それでいい。僕の仕事は、家族を守ること。弟や妹を、立派に育てること。それだけなのだから。
茜「ただいま〜」
維「兄ちゃん!霞と瑠璃が喧嘩してる!」
霞「だって瑠璃があたしのプリン食べたんだもん!」
瑠「その前に俺のアイス食べたろ!?」
茜「はいはい、そうなると思ってかぼちゃプリン作っといたから、食べてて。僕出かけるから。」
霞「雪菜のお迎え?」
茜「そうだよ。維斗、何かあったらよろしくね。」
維「兄ちゃん、たまには変わるよ?」
茜「大丈夫。あんたはプリン食べてな。じゃ、行ってきまーす。」
北風が寒い。近くのビルを見上げる。ここは、飛び降り自殺の発生現場だったな。僕も背負うものがなければ、死ねるのにな…。
雪「にいに〜!」
幼稚園に着くと、元気な雪菜の声がする。
僕は、この子達を守らなくちゃならない。どれだけ浮こうが、授業に遅れようが、親から愛されなかろうが、関係ない。
でも、今も死にたいと強く思う。