前に進もうと思う。
それは自分の将来の夢がどうとかではなくて、自分の幸せのために、前に進みたい。
俺はこれまで、自分自身でも同性愛者の自分が受け入れられなくて、これまでもこの先も恋愛面での幸せはもう求めない、誰とも付き合ったりする気もなく、周囲にカミングアウトする気もないって、まあそんなようなことを散々、これまでの数々の小瓶で言ってきた。セクシャリティを周囲に言う必要なんてないし、誰かと付き合う必要だってないし、そんな話を周囲とすることもなく、なんとなく少し謎の多い人みたいな感じでずっと生涯生きていこうと思ってた。
恋愛面で幸せになることはないから、せめて自己実現をってことで、医者を目指して、息苦しい医学部で生き抜いて高学年になった。自己実現に関してはこのまま、医者を目指すことに変わりはない。
だけれど、気付いてしまった。自分のキャリア面での夢がかなっても、たぶんそれでは俺は幸せになれない。俺は夢に一歩一歩近付いているけれど、幸せに近付いている気配は全くない。人間としての俺の幸せはキャリア面での将来の夢とは、全く別なのだと気付いてしまった。いや、厳密には、最初から気付いてて、気付かないフリをしていた。
そして、やっぱり俺も、人間としての幸せがほしいと、そんな自分の、これまでずっと蓋をしてきた自分の思いに、気付いてしまった。
やっぱり、恋したい、誰かと、相思相愛になりたい、特別な誰かが傍にいて欲しいし、俺も誰かの特別になりたい。恋だけでなく、自分を隠さずさらけ出せるような仲間もほしい。
カミングアウトするかしないかとか、周囲に受け入れられるかどうかとか、もうどうでもいいし、自分自身でも自分のセクシャリティを受け入れられないとか、もう、そんなこともどうでもいい。認めるとか受け入れるとか、そういう難しい問題ではなく、ただ、一人の人間として幸せになりたい。そんな、単純なこと。
俺は医学部に入学するまで色々回り道してしまったから、周囲の大学生よりもいくつか年上。もう医学部でも高学年ってことで、だからまあ、かなり良い大人な年齢。周囲から恋愛相談されるような大人だ(なぜ俺に恋愛相談してくるのか意味不明だが)。こんな年齢で初心者で、右も左もわからない。他のゲイの人や、他のセクシャルマイノリティの人とも、どうやって出会えば良いかもわからない。何から始めればよいかもわからない。おまけに新型コロナウイルスで色々なイベントもなくなって、身動きもとりにくい状況。ハードルだらけだな。
でも、前に進みたい。どうすれば良いか全く見当もつかないけれど、たぶん進み始めれば見えてくる。