「死にたいなんて、言わないで。」
泣きながら訴える親友の姿に俺は戸惑った。
『死にたい』
家庭環境が複雑で、障害もあったお前は毎日のように俺に訴えかけてきたよな。
初めてお前と会った日、
確か公園の木の影で一人泣いてたっけ。
俺が初めて、人を救った日。
あんなに死ぬのを望んでいたお前がそんなことを俺に言ってくるなんて。
俺は視線を泣き崩れているお前から外して、町を見た。
この屋上はこの町で一番高く、町を一気に見ることができる。
この町が、嫌いだった。
世界が、嫌いだった。
どいつもこいつも俺の大切な親友を傷つけて。
「お前が死んでも別に何も変わんないから」って言ってきて。
そんなことないってどれだけ言っても変わらない。
じゃあ、俺が死んでやるよ。
なのに。
なんでお前は反抗しないんだよ。
いっつもお前は耐えていたのに、なんで憎まないんだよ。
優しすぎるんだよ。
こんな世の中でお前だけは。
本当はもっと泣き叫びたいだろ。
もっと厳しく言っていいんだよ。
フェンスから手を離し、俺は泣き崩れるお前を抱きしめた。
嗚咽を抑えきれないまま、涙があふれてくる。
泣いていた。
「お前が、なんでそんなこというんだよ、。」
「いっつも我慢して、周りを見て、優しすぎるんだよ。」
「もっと、泣いていいんだよ、」
涙でぐしゃぐしゃな顔は、俺が初めて見た、お前の顔だった。
二人して、馬鹿みたいに泣いた。
どれだけ経っても涙は枯れなかった。
「お前も、、、ずっと、俺と同じだろ、」
お前がふと俺の顔を見て言った。
「死のうなんて、普通できねえよ、、、おれのために死のうとか、」
「お前こそ、俺にやさしすぎるんだよ、、」
「お前が死んだら、俺どうやっていきればいいんだよ、、」
そっか。
俺もお前と同じだったんだ。
お互いに素直に優しさを見せてなくて。
ほんと、俺たち馬鹿だな。
「、、、確かに」
精一杯涙声で答えて、お前の顔を手で拭った。
お前も俺の顔を手で拭う。
お互いの手が、お互いの顔の涙でびしょびしょになった。
「俺たち、きっとはなれたらだめなんだな」
「うん。」
「だって、約束、したもんな。」
「、、覚えてるの?」
「当たり前だろ。」
『俺は、ぜったいに、離れない。大変だったんだよね、お家が。俺と友達になってくんない?』
『、、うん。』
『そうだ、初めて会った記念に、一生離れない証に、タイムカプセル書こうよ。10年後に一緒に見れるから。』
10年後、俺たちは初めて本音で話した。
「タイムカプセル、取りに行こ。」
「10年経ったしね。行こ。」
まだ涙でぐしゃぐしゃな顔を二人して笑いあって、約束の公園に、俺とらんは向かった。
『タイムカプセル らんが俺の信じられる人に、10年後になっていますように ありす』
『タイムカプセル ありすが俺の信じられる人に、10年後になっていますように らん』