5年目3万キロ代の頃に父から譲り受けた愛車を手放そうか、とてもとても迷っている。
現在12年目、走行距離はもうじき12万キロになる。
もともと実家で乗っていた車。
今は亡き犬の歯型が、今でもリアバンパーのすみに残っていたりする。
譲り受けたのは社会人1年目から。
慣れない仕事と慣れない運転にヘロヘロになって、海の美しい初任地の町を走りながら、たまに泣いたりもした。
引っ越すときも置いていくなど考えもつかず、当然のように私と猫と一緒にフェリーで海を渡った。
擦ったりぶつけたり脱輪したり、本当に申し訳ないことだが、事故を起こしてしまったこともある。
良い思い出も良くない思い出も、詰まっている。
小さな体にかわいさと格好良さを併せ持ったデザインが良い。
乗り心地や運転感覚にも何ら不満はない。
小回りが効いて街乗りや峠道でも不安はない。
アクセルを踏めば踏んだ分しっかり加速するから高速道路も難なく走れる。
細々した不調は無きにしも非ずだが、エンジンはまだまだ好調だ。
今でも毎朝、駐車場で愛車の姿を見ると最高だなと思う。
それくらいには気に入って乗っている。
でも、他に乗ってみたい車ができてしまった。
今後の人生を思えば、じっくりと検討して車を乗り換えるには最後の好機である今、ばっちりと好みに合う車を見つけてしまった。
中古だが、丈夫で、今の愛車にできることのほぼ全てがより上手にでき、+αの性能も備えた、いい車だ。
欲しいな、と思っている。
これは隠しようのない本心である。
でもどうしても、愛車を手放す決心がつかず、断りの連絡を入れてしまった。
年式や走行距離の問題で、私が手放したらきっともう誰も乗ってくれないだろうと思ったからだ。
ところが試しに調べてみたら、まだ海外へ輸出して乗ってくれる人の元へ行ける可能性があるという
それどころか、もう値段はつかないと思っていた愛車に、わずかながら値段もつくと。
本当に欲してくれる人と共に走ったほうが愛車も幸せだろうかと、都合の良い感情論を愛車のボディに押し込めながら、今日ももだもだと走っている。
気が変わったら連絡くださいね、と車屋さんは言ってくれたが、本当にいい車だから数日後には他の誰かが購入しているかもしれない。
どうしたものか。
夢に車が出るほど考えている。