中学生のときの自分へ贈る。
お前は今も、授業をサボって、保健室の真ん中の机に足組んで座って、ぼうっとして何かを待っているのか。
左手首には傷がいっぱいで、ポッケの手帳には遺書を入れて、いつ過呼吸になって倒れるか知れないようなその身体で、深夜の繁華街を、独り言をぼやきながら彷徨っているのか。
無駄なことをするなとは言わない。この私に言う資格などない。
それでも生きて、努力して、こんな進学校に私を入れてくれてありがとう。
辛かっただろ。痛かったよな、12歳の透明な少女にとって、中学受験の全落ちは、辛かっただろ。
辛かっただろ、って、言われたかったんだろ。だから不良やってたんだろ。
でも言ってもらえなかったんだよな。受験に落ちたのは、お前のせいだってだけしか、言ってもらえなかったんだよな。
だから、責任を持って今、私が言う。
辛かっただろ。受験に落ちたのは、お前のせいだけじゃないのに、周りの大人が全部、お前を悪者にしやがった。
かわいそうにな。中学受験をしろといったのも、周りの大人なのにな。
そりゃあ、不良にだってなるよな。自殺未遂もするよな。お前は何も間違っちゃいないぜ。
それでも、生きていてくれてありがとう。頑張ってくれてありがとう。
私は進学校の落ちこぼれ。部活も勉強も、なんでも底辺。
それでも、なんとなく楽しい毎日を送っていられるのは、間違いなくお前のおかげだ。
お前がいるから、今の私がいる。
たまに劣等感を感じて辛くなったときは、いつもお前を思い出す。
お前のその努力は、誰よりもすごいんだって。
辛かっただろ。それでも、生きていてくれてありがとう。
あともうひとふん張りだよ。
お前のそのセーラー服のネクタイが、ブレザーのリボンに変わるとき、
そこには満開の桜が、咲いているから。
満開の桜の下で、お前は3年ぶりに、初めて笑顔を作れるから。