先日、怖い夢を見たので
皆さんに共有しようと思います。
友人にフリーホラーゲームにしたら伸びそうと言われたお話です。
それでは、お楽しみください。
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ある日、私は母と屋内テーマパークに来ていました。
建物の古さからして、平成中期に造られた、古くも新しくもないテーマパークです。
建物の中を母と歩き回っていると、お化け屋敷のような、でもどこか違う不思議な雰囲気の漂う部屋を見つけました。
母はその部屋を指さして言いました。
「行っておいでよ。」
好奇心から私は、たったの一人でその部屋へ、吸い込まれるようにして入っていきました。
入ってみると中は思ったよりも明るく、優しい雰囲気が漂っていました。
心なしか、どこか懐かしい気さえしてきます。
視線を奥へとずらすと、昭和の時代を思わせる商店街が見えました。道は入り組んでいるように見えます。裏路地を無理やり商店街にしたような町並みです。
今流行りの、【昭和レトロ】というやつです。
天井は吹き抜けになっているのか、屋内のはずが見上げれば曇り空が見えました。
空を見つめて部屋の明るさにぼんやりとしていると、
どこからともなく前掛けを下げた優しそうな白髪の生えたおばさまが話しかけて来ました。
「お嬢ちゃん、むこうの商店街の奥に人が居るから、一緒にこれを届けに行ってはくれないかい?」
おばさまは優しい声でそう私に問いかけます。おばさまのしわくちゃな手には丁寧に畳まれた白いワイシャツがありました。
「…ボタンでも付けたのかな」そう思いながら私はそのおばさまの言うことを承諾し、商店街の奥へとおばさまについていきながら進みました。
町並みはいったって普通、おかしな点は一つもありません。
すこし、いいえ、かなり異質なものがあるとすれば、要所要所に必ず魔女と大きな鴉の人形が置かれていることでした。
ですがその魔女も鴉も優しい雰囲気をまとっており、魔女は笑顔を浮かべていました。容姿は白髪になっている長い髪、尖った鼻、青い瞳。大きな魔女の古びた帽子とローブを着ており、手にはほうきが握られています。いかにも魔女という服装と容姿です。齢はまさに、誰しもが想像する老婆のように見えましたから、80くらいでしょうか。
鴉の方はというと、小学生の子供一人分くらいの大きさをしており、色は灰色っぽい紫、ところどころ黒い羽が見られるような容姿でした。こちらも魔女の人形と同様、老いたように見えます。
前掛けのおばさまに商店街を案内されながら、私はところどころに置かれている魔女の人形と目を合わせては微笑んでいました。
何体か魔女の人形を見た後、私達は無事目的地に着き、ワイシャツを渡しました。
ワイシャツを手渡し、視線を逸したとき、ふと、壁になぜか貼り付けられている棚に、少し見るとゾッとするような人形を見つけました。
防護マスクを被っていて、顔は見えませんが、兵隊さんの服を着ている男性の、デフォルメ化された人形さん。
幼少期から兵隊さんをみると怖くなっていた私は、「ここは居心地が悪いから帰りたい…」と思いました。
少し焦ってその場から離れようとしたとき、出会ってしまったんです。
本物の兵隊さんに。
お人形の兵隊さんのもとになった人物と捉えられる人物が、そこには立っていました。
防護マスクの隙間からは、焼けただれた皮膚が見え隠れし、肌は火傷の痕なのか赤黒くなっていました。
なぜか口からは、手袋が出ていました。
その手袋には確かに、人間の手が入っていました。
「ああぁ…今すぐここから逃げなきゃ…」そう思うと冷や汗が体中から出てきます。
しかし、その兵隊さんからはなぜか目が離せません。
「怖い、怖い、怖い…」
「逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ…」
焦っている私を見て、兵隊さんは不穏な笑みを浮かべ、こう、確かに呟きました。
「お前のせいだ」
一気に体中から汗が出てきます。
息も荒れてきます。
心なしか、空も雲がより厚くなり、暗く感じます。
何かを仕出かした気がしてしまい、涙さえ出てきます。
過呼吸を起こしかけたとき、でした。
すかさず案内役だった前掛けのおばさまが叫びました。
「何しとるんや、はよ逃げい!!!」
その怒りに満ちたようにもとれる、
罵声にも似た声は一気にその場の空気を凍てつかせます。
そして私の背中を強く押すように、
その場から逃げようとする感情を私の中から作り出しました。
叫びだしてしまいそうになりながら、私はその場から走り出しました。
これまで通った道を逆戻りして、待っている母の元へ。
そうすると、魔女の人形がまた、私の前に現れます。
害はなしてきませんが、来たときとは比べ物にならないくらい、暗い表情を浮かべています。
今にも泣き出しそうな顔です。
「やってしまった」
と、私はそう思いました。理由は分かりません。
しかし、自分のせいだと思えてきてしまうのです。
後から私を追ってきたおばさまが、叫びます。
「呪いをもらってきやがって!!
謝れ!魔女様に謝れ!!!」
一気に顔から血の気が引きます。
くらくらして今にも倒れそうです。
それでも、謝らなくては。
そう思った私は、
「ごめんなさい…!!ごめんなさい…!!」
そう叫びながら走っていきます。
背後からは、お前のせいで…!!
という声が私を襲ってきます。
走って元の場所に、戻れば戻るほど、魔女の容姿はとても苦しそうに変わっていきます。
果には脱力し、下を向き、帽子は穴が空き地面に崩れ、頭は頭を垂れて髪が禿げています。
鴉は、すこしずつハゲワシのようになっていき、果には凶暴な化け物に見える怪鳥になっていました。
「私のせい…!私のせい…!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!!!」
まさにパニック。
右も左もう、上も下も分かりません。
聞こえるのは、お前のせいだ!!という私を否定する罵詈雑言の嵐だけ。
己のせいで呪いに侵された魔女は、どこまでも憎悪のにおいがして消えません。
やっとの思いでようやくその部屋を出ました。
そして母のもとに戻ります。
「つむぎちゃん!!」
と、見慣れた母が私に向かって笑顔で両腕を差し出してきます。
しかし、私には見えていました。
母の背後に立つ魔女が。
その顔は狂気に満ちていました。
魔女が、母を殺そうとしたその時。
私はやっと目を覚ましました。
起きた時刻は午前5時。
現実世界に帰ってきて、私はこの上ない安堵を感じました。
そうして、また、二度寝をしようと枕に頭を付けたとき、ふと思いました。
「もう一度寝たら、帰ってこれない気がする…」
そう思うと恐くなって、私は母の眠るベッドに駆け込みました。
母に抱かれる安心感。それを感じると私は、母に抱かれながら久しぶりに泣きました。
「ひっく、ひっく…」
そんな声を出して泣いていると、母が驚いて飛び起きました。
大丈夫だよ〜…?
と、そういいながら母は私を抱きしめてくれました。
そうして私は、9月8日の朝を迎えたのでした。
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この話の一番怖いところは、言霊と時間です。
実はこの夢を見る前日、つまり9月7日に私はお風呂場に入る前、こう大きな声で宣言していました。
「私は明日朝5時に起きる!!」
8日、目を覚ましたのは、奇しくも5時00秒でありました。
秒針を見たとき、私は本当に恐ろしくてパニックを起こしかけました。
抱きしめてくれる母が居て、本当に良かったと、そう思いました。
長い話を読んでくださり、ありがとうございました、おつかれさまでした。