弥佳 さん、
日頃の業務お疲れ様です。
何にもない人生というのは無いと思います。何かあるはずです。
ただ、弥佳さんが司書になりたいという夢をお持ちなのでしたら僕は全力で応援したいです。
図書館員とりわけ司書職の場合、初めからプロフェッショナルかつ「T型人間」(広く深く)としてのパフォーマンスを求められます。
合う人には天職ですし、そうでない人にはとことん合わない職だなというのが実感です。
周囲に何人か、大学図書館や公共図書館で司書職に就いている知人がおりますがみんな性格が似ていますね。「真面目にコツコツ」「几帳面で小さなことにも良く気づく」そんな感じです(神経質というのとは違うかな)。
僕は大学で経営学を専攻しながら司書課程を受講、国内では上限いっぱいの32単位を取得して修了しています。
文部科学省の定める司書資格の取得要件としては必須ではないものの、大学側の規定で「図書館実習」がありましたので、国内の大学図書館へ1ヶ月間通いました。
当時の館長さんが非常に熱心な方で、実習担当の職員さんがこれでもかと難題を用意してくれるので、ものすごくやりがいを感じました。
いまは海外の大学図書館で実習できる環境を用意する学校もあるようですね、羨ましいです。
僕は少し前まで音訳と対面朗読の仕事を公共図書館から請け負っていて、養成に5年、そのあと実務に入っていたのも5年ぐらいになります。
「これでメシを食っていくんだ」というぐらいに意思が固いのであれば、相応の覚悟が要るかと思います。
司書職に欠かせない3点セット、自己研鑽能力・知識のアップデート・奉仕の精神です。
いわゆる図書館学にとどまらず、コンピューター、数学、情報学、音声学、統計学、経済学などの幅広い知識。
ことマルチメディアに関しては、画像・音声の標本化や量子化、圧縮/伸長などのデジタル領域だけでなく、マイクロフィルムやジアゾ(青焼)コピーに代表されるレガシーメディアへの深い造詣も必要とされます。
これらを踏まえ、司書職の主要な業務の一つであるレファレンスサービスでは、日々寄せられる調査依頼に対して「人力でのあいまい検索」を駆使して、限られた期間内に適切な分量の回答を用意する能力が求められます。
その礎となるのが「高い語彙力」です。
同じ事象を複数の違う言葉で表現する力、依頼者から提示されたファジィな概念を言語化する力。英語で言うところのシソーラスに近いものを頭の中に蓄積し、運用するのです。
僕も何度か図書館にレファレンスサービスを依頼しています。資格を活かして自分で調べてももちろん良いのですが体調が思わしくないので頼むこともあります。
回答結果票を見ると解るんですが、この部分は担当者の向き不向きがいちばん反映される所です。
たとえば
こんな事例を見てください。
回答プロセスが分からない、事前調査もしていない。
結果票を読む限り、典拠資料の抜粋になっていますよね。
依頼者は「子どもに教えたい」と言っているのに【複】や【補】の字を使っても画数が多い・字面が難しいと思いますので、例示のセンスも良くないなと。
専門職が依頼者に手渡す回答としては少々お粗末と言わざるを得ません。
このような回答が増えると司書職の社会的地位が低下する遠因になってしまうので、気を付けてもらいたいなぁとは思います。
僕ならまず【被】。(「服をかぶるって言うね、その字だよ。」セーターとかトレーナーとか。子どもの動作を思い浮かべれば自然と解ると思います)
それか【袴】。(「はかま、お兄ちゃん着てるね。かっこいいね。」こんなふうに教えてもいいと思います)
「ころもへん」は衣服に関係する漢字をつくると説明するなら、【初】この漢字を例示しない理由はありません。
それはなぜか? 古来、衣服を作るのに最初に行うことは「刀で布を裂く作業」だったからです。だから “つくり” の部分が「刀」なのです。
(注意したいのは「へん・つくり」の上ではころもへん+刀だが、部首は何か?→「かたな/りっとう」ですと補足する必要あり)
漢字が表意文字であることからして、こんなにも説得力のある【初】の字をなぜレファレンスで出さないのか。お気付きのように、事前調査を省いて、依頼者のフォーカルポイント(注視点)である「へん」ではなく部首ありきで回答してしまったのが原因ですよね。
向き不向きと書いたのは、こういう事例を見てきているからです。
単なる国語力だけでなく、感性の領域に踏み込んだ言葉の運用能力、発想力が必要と言ってもいいでしょう。上に書いた「字面」この感覚・センスもそうです。
英語や中国語など外国語が得意であれば、大学図書館や企業内図書館の職員として働くときにそのスキルも遺憾なく発揮できると思います。
図書館員としてスムーズに仕事をするには、日頃から、ハードディスクのような入れ物を常に脳内で回しておくことが必要です。
これまでの人生で見聞きしてきたデータもそこへ入れておき、通勤中に見かけたキャッチコピー、世の中のトレンド(ファッション、ガジェット、世界情勢、株価 etc.)その他いろんなものを吸収して、それらを都度ハードディスクに書込み、データベースを更新しながら、また次の日に備える。
こんな感じでしょうか。
司書はまさに情報探索のプロです。司書資格は図書館以外にも色んな組織会社で役に立ちますし、その能力は重宝されるはずです。
参考までに、以前宛メに寄せられた文献調査依頼に対して僕が
お返事していますので、良かったら見てください。
司書はどのように文献を調査して依頼者に回答するのか、ある程度レファレンスサービスのやり方に合わせてあります。
長々と失礼しました。
僕の現在位置より