ちょっと前に、ピアノのコンクールがあった。
出る人数はざっと30人くらいかな。まだ予選だけど、みんなすごくうまかった。
私は小1からずっとそのコンクールに出てるけど、全部予選で金とってて、ピアノが上手い子って認知されてるくらいだった。
まぁ、本選では全部落ちてるんだけどね。
でも、去年と今年は、私の友達がそのコンクールに一緒に出ることになって。
でも去年は、その子は銀賞、私が金賞だった。
口では私に「おめでとう」って言ってくれてたけど、長年一緒に仲良くしてきた仲だから直ぐにわかった。
すごく悔しがってて、その後、狂ったように練習を続けてたのも知ってた。
それから1年経って、今年のコンクール。
でも、私はほとんど練習しなかった。
練習する気力が起きなくて、やらなきゃと思っても出来なくて。
だから今回は、お金を払ってくれた家族には悪いけど、金賞とらずにただ弾きに行くだけの感覚で練習してた。
でも、本番が思ったより上手くいっちゃって。
お父さんもお母さんも、「他の人と音が全然違った」「あの練習量でここまで行けると思わなかった」って言ってくれた。
私が弾いてる時に「あの子だけレベチじゃない?おかしくない?」って言ってくれてる人もいたんだって。
その話を聞いた時、まぁ、ちょっとだけ嬉しかった。
でも、本当に練習なんてしてない。たまたま上手くいっただけだし、こんな演奏で金賞はとれない。
神様は努力する人に幸せを与える。
だからきっと、なんの努力していない私よりも、友達の方がきっとうまくいくって思ってた。
それなのに、自分は金賞とっちゃって。
友達はまた、銀賞だった。
ピアノの先生とか、友達の話とか聞く感じでいくと、ものすごく練習していたんだと思う。私とじゃ比べ物にならないくらい。
そんなに努力した子が、全く練習してない奴に負けるなんて、可哀想なんじゃないか。おかしいんじゃないか。
神様なんて、人の努力を見てすらいないじゃんかって、思った。
素直に金賞取れたことを喜べなかった。嬉しいんだけど、ずっと罪悪感がある。
ごめんなさいって、すごく思った。
私の次に演奏するのが友達だったから、結果発表の時も隣の席だったんだけど、番号呼ばれても、嬉しさより先に罪悪感が込み上げてきて。
たまたま目が合っちゃった時、なんて声をかければいいのか分からなかった。
「貴方は本当にうまかった、かわいかったし、あの瞬間で1番輝いてたのは貴方だった。貴方の努力は私が認める」
咄嗟にこんな事を言った気がするけど、よく考えたらただのマウントしか聞こえないよね。
努力もなしに金賞とったやつに、そんな上から目線なこと言われる筋合いはないだろうに。
正直、確かに私の方が賞の数も、ステージ経験も、うまいって褒められる回数も多かった。
でもそれは、ちゃんと努力をして結果を出した時だけ。
いちばん頑張ったのは私の友達なのに。なんで私が?
ごめん。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
予選で金賞とったひとは、ちょっとレベルが高くなる本選に出れるんだけど、出るか出ないか私すごく迷ってる。
私の友達は優しいから、「そんなの心配するつもりないよ、○○ちゃんならきっとできるよ!」って、嘘でも言ってくれるんだろうけど、本当は自分が出るべきじゃないのになあって。
ひどい。この世界に神様なんて存在しちゃいなかったんだね。
ごめん。ごめんね、私の大好きな友達。
貴方の努力を私の汚い靴で踏み潰してしまって、本当にごめんなさい。