修学旅行と言えば青春の塊だと思う。親の囲いから外れて男女が入り交じりながら、友達と思い出を作るのだからその準備だけでもやれ恋愛だ友情だと話題はつきない。修学旅行の班決めも終盤で紙に書いて先生に提出しなければならない期限が明日に迫っていた。予定では紆余曲折あった後あの子と同じ班になれる予定になっていたが、予定は予定で変わるもの。グループは3~5人までときまっていなんでも友達が彼氏と回ることになったらしく人数調整をしてくれていた親友は責任を感じて友達+彼氏の所に自分が入ろうとしていたからどうせぴったり一緒にずっといなくてもいいしなと思って私も同じ班になった。同じような動きをするとは言え班が違うのは寂しい。
その次の日の朝、親友とあの子と例の友達とで班やら彼氏さんやらの話をしていた。するとあの子と友達が私を心配していた。どうやら私が一年生の時恋愛関係にある男女やその青春の片鱗を見聞きすると精神的に可笑しくなっていたことを懸念していたらしい。流石にネタとは言え母に言ったら怒られたのでしなくなった。それでも心のなかまで知られるわけではないからリアクションを取らないように感情を押し込め、消化できないような、胃に揚げ物を残したままだった。母さんにやめろって言われたからやめたと話したら友達が何を思ってかアドバイスだと言わんばかりに「あんたも彼氏つくればええでえ」と言った。別に私は友達に怒るわけでもなく、自分を許容できない人間だと知って呆れたり悲しくなったりするわけでもなく、ただ、なにも考えられなかった。糸電話をプツンと切ったように私と友達は静かになり、それは波のように近くにいたあの子と親友にも訪れた。ここにいる四人だけが波に飲まれたみたいに一瞬、だけど確かにそれぞれの自分の思考を持って静かになった。一拍くらいおいて親友とあの子は元の話題へ帰ってくれたおかげで音が戻ってきた。が私の頭は混沌に混沌を重ねていて何を言えば、どんな反応をすればいいか分からず取り敢えず無言で傷心した振りをした。すると何を思ってか友達が背中をさすり慰めてきたので流石にろくに働かない状態の脳も外部からの刺激で今必要なことを考えはじめ、なんで私慰められてるのとツッコミを出した。その時は先生が来て席に戻った。まだ一時間目も受けてないのに今日一日分の情報を五秒で入れられたみたいに頭が重く結局丸一日以上考え込んだ。何をいえば、どう反応すれば、もし他の人間を好きになっていたら、?母の逆鱗に触れる僻みの言葉を封印しろという戒めを守っていてなおかつ、性的少数派も傷つけていないならこれが一番だった。反応だっておちゃらけていたがあれが一番最善手だった。もし違う出会い方でも私はあの子と仲良くなる前からあの子に惹かれていたし、あの子以上の人なんて早々見つけられないから他の人間なんて論外。余裕のある今になって具体的に何がそんなに引っ掛かって混乱したのかと言うと自分に本来は選択肢が彼氏しかないはずなのに今は同性(あの子のみ)も含まれていてしかも話が聞こえる範囲内に好きなあの子がいたからだろう。結局その日は頭のなかは混沌を極めてずっと教室の床みたいにグレーだった。私は別に同性全員が恋愛的にしか見れないわけでも男性が恋愛対象にならないわけではない。たまたま好きになった人が性別がお揃いだっただけだ。
ちょっと気になってることがある。同性が好きになったと親友に相談した次の日になんでもいいから好きという言葉を伝えるようしてみたらとアドバイスをもらった。でも私は「好き」という言葉自体結構使っているから誰彼構わず言っている。だから特定のあの子だけに言うってことは難しい。で、結構親友にも言ってしまっていてどうしよ?ま、いっか。たかだか私みたいな学生の悩みなんてそれくらい。