お前が欲しい。
今でも思い出すし、今もお前だけは欲しい。
お前だけは特別だから。
もう一度、抱きたい。
数年ぶりに、そんなLINEが届いた。
ずいぶん昔、ただならぬ関係だった人。
と言っても、当時はお互い独身だったし、付き合っている人はおらず(多分)、誰かに迷惑かけるとかでもなかったので。
欲望の赴くまま、ただ体を重ねるだけの関係だった年上の彼。
つかず離れず。
深いところまで理解しているようで、していないような。
そんなふうに、長いこと曖昧な関係でいるうちに、彼は結婚することになった、と打ち明けてくれた。
そっか。
じゃあもう終わりだね、幸せにねって笑って言ったつもりだけど、笑えてたかどうかはわからない。
帰りの車の中で、私はどうしたかったんだろう、彼とどうなりたかったんだろって泣きながら考えたけれど、ずっと答えはでなかった。
あれから、もう20年ほど。
私も結婚して、子供が産まれて、とても幸せだと思っている。
あの頃の荒れていた自分を受け止めてくれたのは旦那だし、どん底だった私を見つけてくれたのも旦那だった。
だからもう2度と、あの頃のようにはならないように。
正しく前を向けるように。
そう思っているのだけれど。
そんなふうに言われたら、燻ぶっていた心が。
もういいかなって諦めていた女の部分が。
ソワソワして、なんだか落ち着かない。
こんなに時間が流れたのに。
彼に女としてみてもらえてることに対する暗い喜び。
旦那に対する後ろめたい気持ち。
どうか2度と、彼に再会することがありませんように。