ひび割れる音が静かに響く。
きっと誰も聞くことはないだろうその音を、僕だけが聞いている。
ぬるま湯が途端冷え出した。しばらく心地よかったその温度が、まるで牙を僕の素肌に突き立てるように,不快を与えた。
僕は泥人形。
冷い水がそこらじゅうを引っ掻き回し、僕の原型を奪っていく。
水から這い出る選択肢を、とっくに失った頃にここから出たいという感情が湧き上がってくる。
崩れきり、魂が損なわれる日をのらりくらりと待つ日々が始まった。
いや、以前からそうか。
もし僕がここから這い出たら、僕はくたばるだろうか。
這い出る体はいつだって重たい。
だからいつも諦めるんだ。