春になると思い出すことがある。
大学生の時。
高校3年間、ずっと好きだった人と会う機会があって、連絡先を聞いた。
友達の影に隠れながら、精一杯勇気を出した。
連絡先を聞いたのは、付き合いたいからじゃなく、好きだったことを伝えたかったから。今思えば、伝えられても迷惑だし、第一、自分は高校でも地味だったから気持ち悪かっただろうな。
緊張しすぎて、話したこともろくになかったし。
あの頃の自分は、馬鹿みたいに浮かれてた。連絡先聞いた時、
苦笑いみたいな困った顔されたなぁ。
メールは全部自分からで。楽しくなかった。向こうは迷惑なんだろうなって、簡単に分かった。ずっと好きだったはずなのに、なんにも胸に響かなくて。相手が無理してるの、よく分かった。
気付いたのは、相手の優しさ。それから、自分の馬鹿さ加減。
知りたいことがいっぱいだった。
3年間大好きだったから。聞きたくても、聞けなかったから。好きって言葉を伝える前に、知っておきたかったんだ。
でも迷惑だったんだね。優しくて断りきれなかったんだね。
悲しくて、申し分けなくて、自分から聞いた連絡先を消してしまった。
それからもう2年くらい経つ。
綺麗な恋のまま、大切に残しておけばよかったなあ…
連絡先なんか聞かずに、ただ笑ってさよならすればよかった。不細工なりに、笑顔の練習しとけばよかった。
きっと会うこともないけど、好きだったことがばれていませんように。
今はもう、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てたい過去になっちゃったけど。
忘れてくれていますように。