LINEスタンプ 宛メとは?

綺麗事をめぐる四方山 綺麗事プリンスかく語りき 綺麗事がなくなったら幸せな人が増えるのか

カテゴリ
先代の時代からお付き合いがあるギャラリー・オーナーがイギリスにいる。
ちょっと前に顔を出したとき、ちょうどインターンさんにギャラリーの仕事を教えているところだった。

インターン期間が終了し、オーナーは丁重なお礼と励ましの言葉で、そのインターンさんをお見送りしようとした。
ところが、インターンさん、最後の最後に、これまでため込んでいた不満をぶちまけた。
「あなたは綺麗事ばかり言って、本心で何を考えているのか全く分からない。
私の仕事ぶりを一度も注意したことがないが、ちゃんとやれていたのかどうか分からず、不安でどうしようもなかった。
一体私はきちんと仕事ができていたのか、最後に一言くらいあってもいいのではないか」
オーナーは、落ち着き払って答えた。
「君の仕事ぶりについては、何も指摘しようがない。というのは、君は、仕事と称しておままごとをやっていただけだからね」
インターンさん、この一言でフリーズ。
オーナーは続けた。
「何がどうおままごとなのか、それをすべて説明しようと思えば、2時間や3時間では済まない。
一方、私が自分の時間をどう使うかについては、私自身に完全な決定権がある。
君のおままごとについて何時間もかけて説明するくらいなら、昼寝するか映画でも見て過ごす方がましだと判断した。
だから、綺麗事を言って終わりにした…というのが、君が欲しがっている本心だが、これで満足かね」
インターンさん、泣き出す。
オーナーは、淡々と続ける。
「一つ質問があるんだけど、僕にこうやって時間を無駄にさせるどんな正当な理由が君の方にあるのか。教えていただけませんかね」
インターンさん、これがとどめになり、
「お役にたてず済みませんでした!お時間も無駄にさせて済みません。お世話になりました!」
と頭を下げ、泣きながらギャラリーを後にした。

オーナーは深いため息をつくと、僕の方を向いて言った。
「あれが普通の反応だよ。十中八九、インターンはああいう反応をするよ。やっぱり君が異常だったんだ」
「いやぁ、それほどでも…」
僕は頭を搔いた。

そう、オーナーが言う通り、僕もウン十年前にここでインターンを経験し、今とまったく同じことを言われた。
だが、最後のオーナーの質問に対して、当時の僕は、気力を振り絞ってこう答えた。
「ご心配なく。オーナーは、時間を無駄にはしていませんよ。
他人が自分のために時間を使ってくれて当たり前と思ってはいけないということを、僕のような将来有望な若者にキッチリ教えたのですから」
そして、こう締めた。
「僕のために使った時間は無駄ではなかった。
あなたがそう思えるような人間に、僕は必ずなります」

「どうです、僕は約束を守ったでしょう?」
「まあそうだな。少なくとも、綺麗事抜きで話ができる人間にはなったようだ。
それだけでも嬉しいよ。実際、この歳になると、そういう付き合いができる人間がどんどん先に逝ってしまうからなあ」
そう呟いたオーナーの顔には、立場上、綺麗事を言い続けなくてはならない人特有の疲れが滲んでいた。

綺麗事を言い続けなければらない立場。
僕も長年これを経験した結果、綺麗事や綺麗事を言う人たちへの攻撃は、一切やめることにした。
綺麗事というのは、言っている本人としても、それ以外にどうしようもない場合に使われること。
言わずに済む方が本人だって楽なこと。
様々な慮りから、敢えて自ら心理的負担を負って綺麗事を言う選択をしていること。
自分の経験を通じて、こういったことを肌身で理解したからだ。

前職で、僕と同時期に転職したある部長のことを思い出す。
この部長にとても懐いていた若手社員が、部長の退職を知って泣き出した。
「私も部長のところについていきます!」
と言われ、部長は答えた。
「ありがとう。僕としては、お世話になったこの会社が、もっと成長してくれると嬉しいね。
僕のところで成長した君の活躍で会社が成長してくれたら、もっと嬉しいね」
これは、勿論、こてこての綺麗事である。
退職日当日、僕と二人で地味に慰労会をやったとき、お座敷に入るなり彼は畳に倒れ込んで、深い深いため息をついた。
「あー気持ち悪い。自分で自分が言った綺麗事が気持ち悪い。もう二度と管理職なんかやらないぞー」
「同感だね」
「ついてくるとか、ホント勘弁して欲しい。在職中、あれだけ僕に尻拭いさせておいて、まだ足りないのか?
せめて最後くらい、ひとにもたれかからないで黙って見送るくらいの気遣いできないのかね。
ついてきて何をするっていうんだ。あの子にできることなんか何もないよ。
それとも何か、転職先でまで僕に自分のオムツ替えをさせる気かね?
あーうんざりだ。成人済の連中のベビーシッターなんか、金輪際お断り!」
はい、これが本音。

「言いたいこと」と「立場上言わねばならぬこと」とのギャップが大きければ大きいほど、本人の心理的負担は大きい。
彼はその後、部下を持たずに済む小規模のプロ集団に転職。
実力的に自分と同格の人間とだけ関わればいい環境に移り、ストレスフリーな仕事人人生を歩んでいる。

綺麗事、そして、綺麗事を言う人への攻撃は、これほどまでに大きな心理的負担を敢えて引き受けている人たちの配慮を土足で踏みにじる行為だ。
綺麗事が嫌なら、誰も綺麗事を言わずに済む世界を自分で作れ。
それができないからって、優しい嘘をつく人たちに八つ当たりをするのはお門違いだ。
僕は、自分にそう言い聞かせている。
そして、「綺麗事を言わずに済む世界」というものは、人間の生物としての仕様が大幅に変わらない限り、実現不可能という認識だ。
実現不可能だからこそ、綺麗事の授受という生活の知恵が生まれ、人間社会に定着したものと理解している。
ちょうどチャーチルが、
「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、過去の他のすべての政治形態を除いては」
と言ったように。
綺麗事も、人間社会を円滑に運営していく方法として「綺麗事よりよりマシなもの」が何もないから、今に至るまでヒトの行動様式の一つとして残ってきたのだろう。
ローレンツ博士の「攻撃」という名著がある。
同種の個体間で生じる攻撃的な行動で滅ぼし合いになるのを避けるため、動物が編み出してきた様々な儀式について書かれている。
「笑顔」でさえ、その一つだ。
恐らく「綺麗事」も、そうして編み出されてきた儀式の一種なのだろう。
実際、綺麗事を言う能力を人間が喪失して、お互いに本音しか言えなくなったとしたらどうだろう。
滅ぼし合いに発展して、とっくの昔にヒト社会など消えていたのでは?
良しあしはさておき、ひとまずヒト社会が今日まで存続しているのは、人間の「綺麗事を言える能力」に依るところも大きいだろう。

さて、綺麗事はお手の物の管理職者の間では、同じ痛みを知るもの同士、綺麗事をめぐって今更な議論が起こることはまずない。
それどころか、たまに綺麗事頂上対決の様相を呈することさえある。
あるとき、恒例の「会社の今後について話し合う会議」で、登壇して議論するパネリストを選出するという話が出た。
当時の上司が、僕に是非パネリストをやって欲しいという。
僕はその会議の日、有休を取って遊びに行く予定だった。
僕は、綺麗事で答えた。
「パネリストですか…いやぁ、僕みたいな何も誇れる実績がない人間より、Sさんの方が適任じゃないですかねぇ。社内外で何かと話題の人物ですし、彼女が出ればパネルディスカッションも盛り上がるでしょう」
上司も負けてはいない。
「いやいや、話題の中身が問題だろう。TPO弁えずにぶっちゃけ…いやいや、あの正直さは、確かに一部の人間には受けるかもしれないが、やはり会議の性質上、なるべくポジティブな方向に議論を持っていけるスキルが欠かせない。その点、綺麗事プリンスの君なら、私も安心して任せられるんだがね」
「いやいや、何を仰います。そこはやはり、部下の指導に責任を持つ立場、Sさんに、正直さと綺麗事をバランスよく使うことの必要性を理解していただくためにも、多少荒療治かもしれませんが、人前に立って話すという経験を積んでいただく方が有意義かと…」
こんな感じでしばらく綺麗事の押し問答を続けた挙句、僕が勝った。
時間の無駄でしかない…いや、「僕ごときが参加しても大きな貢献が出来そうにない大切な会社の集まり」は欠席して、Sさんにパネリスト役を押し付け…いやいや、「Sさんがいかんなく実力を発揮できる機会を作ることが出来て」、本当に嬉しかった。

綺麗事プリンスの面目躍如と言ったところか。
214245通目の宛名のないメール
この小瓶にお返事をする
誰でも無料でお返事をすることが出来ます。
お返事がもらえると小瓶主さんはすごくうれしいと思います。
※誹謗中傷や否定批判のお返事は流れません。
以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。
見た事しか無い悪夢の世界。トラウマと悪夢と睡眠薬の話。 生きるほど惨めで、しかも楽しくない。どこにも居たくない。この部屋にも。死ぬ方法は決めているけど、勢いで即日決行できるものではない為に、明日も生きなきゃいけない。 地方住みの転職活動をした方、どんな転職サイトを使いましたか? 空手道部✕演劇部✕生徒会=……? この人、私の事好きなのかなって思ってしまった。殆ど話したことない人だけど。 このままじゃいけない。分かってんのに 自分の生きてきた話 組織が本当に苦手。組織は要る、ということは分かる。大きな目標達成のためには組織は必要。でも、自分が潰れてまで組織の中で生きることに意味を見出せない 今日も疲れた。頑張った。明日も学校ある。課題終わらない。量多い。先生怖い。喉痛いし、精神病んでる。死にたいけど、明日も頑張らなきゃ 日記に書いたこと 卒論、鬱。何もかもが嫌になってくる。本当は夢のために時間を使いたいのにそれを我慢しなければならない。 「死にたい人が歩いてる」(第三回)(前の小瓶の続き) 1通目。本音を話せる相手がいない。ノーと言うと嫌われるのではないか。怖い。ひとりぼっちは嫌だ。でも、都合よく軽く扱われるのも嫌だ。 僕はいつまでここに留まっている?ずっとここにいるような気がしてきた 暫定留年回避とクレープ。こないだからかなり荒れていたので自分を落ち着かせるためにもなにか書こうと思います。超長文です。

宛メのサポーター募集
お知らせ
お知らせ一覧
宛メサポーター募集 宛メで音楽 宛メコラム 宛メのアドバイザー石渡ゆきこ弁護士 宛メのアドバイザーいのうえちかこ(心理士・カウンセラー) 悩み相談ができる相談所を集めたサイト 宛メ本 小瓶に手紙を入れて流す
宛メについて
宛メのこころえ(利用者さんの言葉) お返事のこころえ(利用者さんの言葉) 宛メに参加している人たち(利用者さんの言葉) 宛メとの出会い(利用者さんの言葉) 初めての方 Q&Aヘルプ 宛メ、サポーター募集! 運営委員のご紹介 運営委員ブログ 特定商取引法に基づく表示 お問い合わせ 運営会社
twitter & facebook & instagram
フォローやいいね!すると宛メの情報が届きます。
緊急のお知らせなどもこちらから配信しますので、ぜひ登録をお願いします。
Follow Me