私に対しては穏やかだけど、人に使われるのが嫌いで仕事が長続きしない酒好きの父親。
気が強く声も大きい、幾度となく私を言葉で傷つけた母親。
既に酒を飲んで酔っ払っていた父親が外に飲みに行くと言い出した。
体の調子があまり良さそうではなかったので止めたけど、いつもと同じ言葉で遮られた。
「生きてるうちに好きなことしなきゃでしょ」
……ああ、またか。私が幼い頃、父は仕事を転々としていた。父は金遣いが荒く、頻繁に車やバイクを買ってしまう。子供ながらにお金がないのは理解していた。
……好きなこと、今まで散々してきたじゃない。まだ足りないの?
そんな怒りがふつふつと沸いて「じゃあ飲みいってくれば」と突き放した。
少しは申し訳ないことしたなって思ってくれれば私だってこんな風に思わないのに。
父親が飲み過ぎないように母が見張ると、2人は飲みに出かけた。
「1時間で戻る」と言ったのに帰ってきたのは4時間後。
そこには泥酔して吐き散らかし、歩けなくなった母の姿があった。陽気な声で笑いながらひとしきり吐いてまた布団に寝そべる。
……この人たちは私の気持ちなんていつだってお構い無しだ。
私がどれだけあの時辛かったか、傷ついたか、知りもしないで。
その楽しそうな顔が心の底から憎い。