私の懐かしむ場所はもう無い。
幼少期に暮らしてた、
大好きなお婆ちゃんのお家。
お婆ちゃんと猫の匂いのする
大きなお家。
レモンバームを摘んで来い。
そう母に言われて向かわされたのは
お婆ちゃんのお家。
こっそり摘んで来いって言われたけど
それは多分悪い事だから
今そこに住んでる叔父にこっそりと
承諾を得ようと思ってた。
お婆ちゃんは施設暮らしだから
お家は今は叔父しか住んでない。
と言う訳で、"元"お婆ちゃんのお家。
その場所は外見は殆ど昔のままでも
中身がごっそり違ってた。
料理下手なお婆ちゃんが頑張って
ご飯を作ってくれた台所も、
私がよく遊んでいた部屋も、
お婆ちゃんが私に靴を履かせてくれた
玄関も、
エロ本だらけでがっかりした。
私が猫とよく日向ぼっこしてた屋根の上
にも行けなくなってた。
エロ本のせいでドアが開けられなく
なってたから。
猫も1匹もいなかった。
4匹中、1匹は亡くなって
1匹は行方不明
1匹は私のお家に
1匹はご近所さんのお家に。
ご近所さんの所に行った猫は
私とよく日向ぼっこしてた子で、
顎がしゃくれてて可愛かった。
あの子はどの人にでも常にキレてるのに
私にだけはお腹を見せて甘えて、
私とだけは仲良しだった。
叔父が世話をしないから
ご近所さんが引き取ってくれたらしい。
私の大事な友達だから、有り難い。
今は幸せそうだから良いけど、
少し寂しいな。
懐かしい場所は無かった。
どこにもなかった。
どこにいったんだろう。
悲しいな。
また1つ、"大切"がなくなった。