狂ったふりをした。
完全に狂ってしまう前に、理性的に狂った。
自分がどれくらい正常であるかを確かめた。
そうしたら楽になった。
まともな思考が帰ってくるような気がした。
冷静になって、怖くなった。
現実という名の悪魔が私を殺そうと迫ってくるんだ。
悪魔が私を憂鬱にする。
悪魔が私を不幸にする。
悪魔が私の不安を掻き立てる。
悪魔が私に囁くんだ、死んだら楽になれると。
また私は狂ったふりをした。
そうすることで悪魔から目を背けようとした。
今度は何も考えないようにした。
そうしたら、いつの間にかカッターナイフで自分の腕を切り刻んでいた。
血を見て、へらへら笑っていた。
私はとっくに狂っていたんだ。
私はもはや私ではなくなっていたのだ。
確実に狂った。
完全、とまではいかないものの、おかしくなった。
私は誰なんだ。
まともな私はどこへ行ってしまったんだ。
分からない。
誰も答えてはくれないし、そもそも答えを持っていない。
助けてくれ!
このおぞましい世界から救い出してくれ!
この世界は地獄だ。
優しい人から死んでゆく。
残るのは異常者のみ。
他人の痛みも考えず、他人を踏みにじり、他人を殺し、自分勝手に生きる愚か者だけが救われる。
愚か者はよく、こう言う。
死んではいけない。
自殺は悪だ。
人と協力して、助け合いながら生きましょう。
絆。
友情。
愛。
愚か者ほどそういう言葉を並べたがる。
何故なら奴らは救われるから。
何故なら奴らは、救われない人間の悲しさが分からないから。
この世界は地獄だ。
自殺したくなるのも無理はない。
むしろそう思える人間はまともである。
つまり私はまともだ。
狂っているのは世界の方で、私はまともだ。
もう、死ぬしか救いがないのだろうか……。
明日は常闇。