別になんてこともない話です。
今日は学校昼で帰ってくる日だった。
明日がテストの日だから。
いつもは6時下校だけど、今日は1時半には
家に着いた。
真昼間の空の下、歩いた。
普段あまり歩いたことのない時間帯。
いつも通る道がなんだか新鮮に見えて、
たった10分の帰り道がとても楽しかった。
家に帰ると母がいた。ゆっくり昼寝をして
いたから起こさないよう静かに着替えた。
もう必要ないだろう、と冷房の付いていない
部屋の開いた窓からは青い空、鳩の鳴き声。
良い風が吹いていて、その匂いはなんだか
懐かしかった。
椅子に座って、1番風の通る席が、
普段私が勉強する場所。窓を閉めて冷房を
つけていた時には分からなかった心地の良い
風が頬をなでる。
あぁ、平和ってこういうものなんだなって
思った。
別になんてことのない日常、
気に留めたこともなかった自然。
遠く離れたあの子は今、何をしているかな。
授業中かな。サッカーしてるかな。
あの子の妹は、何しているかな。
苦手な給食、食べているのかな。
暖かい風の中で考える。これは平和だ。
こんな世界のどこかで誰かが泣いて、
誰かが死んで、誰かが苦しんでいて、
どこかでは戦争が起きている。辛い話だ。
だけど。
どこかでは新しい命が生まれ、
花が芽吹いて、新しい雲ができて、
誰かに感謝してる誰かがいて、
「ありがとう」の言葉にほんのちょっぴり
寂しさの晴れた誰かがいて、
晴れた空に青春を感じている人がいる。
きっと、いる。
これは平和だ。
学校に行きたくないとか、
テストが嫌だとか、
あんな狭い教室の中に閉じ込められていたら
気がつかなかっただろう広い世界が、
今私の前に、見えた気がする。
明日、学校に行きたくない。
それでも、今はこの空に身を傾ける。
風に鼻歌をのせる。
これは、平和だ。