会社の机のレイアウトが変わった。
固定席が無くなり、フリーアドレスの席に変わった。
会社に来たら、どこでも自由な席に座ることができる。
今まで顔は見た事あるけど、話したこと無かった人が向かいの席に座ってたりする。
基本的に仕事上大した存在価値の無い派遣社員の自分は一日中黙って仕事をする。
一人で黙々と作業するので、誰にも話しかけないし、誰からも話しかけられる事も無い。
誰とも話さなくてもできるような仕事であり、誰かから必要とされてないので話しかけられる事が無い。
もう数年間この会社にいるのに、自分の名前を知っている人はごく一握りだろう。空気のような存在だ。
たまにビデオ通話をするためにイヤホンマイクを付ける瞬間だけ、自分がちゃんと仕事をしているような気になる。
その会議もただ参加しているだけで居ても居なくても良かったりする。
一日中黙って仕事をしていると、周りの人の様子がよく見える。
忙しく動き回っている人、よく喋る人、眠そうな人、何してるのか分からない人。
退社までの時間は異常に長いが、中身の無い時間なので一ヶ月が過ぎるのは異常に早い。
フリーアドレス制は存在価値の無い人間を見事に炙り出す事に成功したのであった。