学校に行ったせいでお家が貧乏になった。
お母さんはいつもカリカリしていて、弟と言い争いばかりしている。
聞こえてくる内容は「お金がない」とか、「頭がおかしくなりそう」とかばかり。
弟はそれでもお母さんを攻め続ける。そしてこっちにも危害を加える。
お父さんはなんだか可哀想。家のお父さんは子育てに向いていない人なのに、二人も授かってしまった。しかも、自分の子供に影で可哀想って憐れられてる。
お父さんもお母さんも帰りが遅い。元々自由な身のはずだった。子供が二人とも自立するまでずっと不自由、不幸せ。
学校はお金かかるから更に不幸せ。お金がないと貧乏で不幸せ。貧乏は惨めだと思っているからもっともっと不幸せ。
四人家族、みんなお金がなくて不自由で惨めで可哀想。
もう、可憐な夢の中へ逃げたい。
飛び降りるのも轢かれるのも痛い。酸素が無くなるのも苦しい。
親よりも先に去ると駄目らしい。遊ぶの大好きだけど、実は真面目だから、これを信じてどうも去れない。
だから夢の中へ逃げたい。そして二度と戻らない。
ヒステリックなお母さんにも、怒りを扇動する弟にも、可哀想で無神経なお父さんにも、もう会いたくない。名前も呼ばれたくない。
お金のことも、学校での友人関係のことも、もう考えたくない。
ただただ綺麗な花畑が広がる素敵な夢の中へ逃げたいだけなんだ。
時々、大嫌いだけど大好きなお友達が来て、美味しいお菓子を食べながらお友達の面白い話に大爆笑する。そして飽きたらみんなでゲームする。それも飽きたら寝て、起きたらお開き。また来てねって気持ち良く別れる。
夢の中では、そのお友達のこと嫌いになりたくないな。
時々、推しのこと眺めたりもする。夢だから何が起こっても、何をしても不思議じゃない。幸せそうな推しを眺めて、こっちも幸せになる。幸せすぎてニヤけてしまうくらい。もしくは、とても尊くて泣いてしまう。
お花が大好きだから、春夏秋冬、世界各国全ての花が咲いて、少し摘んで飾ったり、生けたりする。
美味しくて思わず足をばたつかせるようなお料理を自分で作ったり、作ってもらったりもする。お友達におすそ分けしたりもする。
可愛い服や髪型やネイルなど、どんなスタイルのお洒落も楽しめて、心も晴れやか。
小さい頃から大好きな仔犬のぬいぐるみも、夢の中だから喋るし、動く。たくさん食べたり、たくさん寝たり、たくさん遊んで、楽しく過ごす。
もう、ずっと、永遠に、惨めな気持ちになりたくない。寂しい思いも、比較して悲しい思いはしたくない。
夢の中へ逃げたい…。
逃げたい…。
逃げたい…。