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ドミノ・ピザの箱に書かれている英語。いくつかバリエーションがあるけど、サイドメニュー用の小さな箱に書いてある文が、心に引っ掛かってしまった。そんなはなし。

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僕の現在位置です

【ド~ミノ・ピ~ザ♪】
のサウンドロゴでお馴染み、アメリカ生まれの宅配ピザチェーン。
僕も2~3ヶ月に一度ぐらいの頻度でお世話になってる。

従姉妹の姉さんの上の娘が、この4月から中学2年生になった。
幼稚園児の頃から ECC ジュニアに通いながら、今は英検3級の勉強に勤しんでいるそうだ。
それで、姉さんから連絡があって、ドミノ・ピザの箱に書いてある英語の意味を教えてほしいと言う。
姉さんの旦那は薬剤師で、調剤薬局の管理者(=店長)をしてるんだけど、薬学部出身だから外国語(英語・ドイツ語)は得意なはず。
「僕ももちろん手伝うけど、まずは旦那に訊けば?」って言ったら「僕の現在位置のほうが旦那より英語できるでしょ」とな。
んー、どうかね。

「で、何故にドミノ・ピザ?」と尋ねたら、姉さんの誕生日の夕飯が「家族でピザパ」で、その時にドミノで頼んだんだって。
それで、上の娘がピザの箱に書いてある英語を読んでたんだけど、分かる所と分からない所があって、併記されてる日本語とも(訳が)合わなくてモヤってるみたいだから、教えてやって欲しいと。
「あぁ、確かにあの日本語は相当意訳されてっからね。あの子のことだからモヤるのも分かるよ。」と言って、「ちょっと時間ちょうだいね、いまピザの箱の画像検索するから。」と、ネットの海に漂う “ドミノ箱” の画像を集めた。

一通り写真が揃ったところで、上の娘に電話を代わってもらい「久しぶり~。僕の現在位置だよ! 元気?」と言ったら「ん~、微妙」と返された。
そうか、微妙なのか……。ああ見えて気難しいところあるからな……。
「にいちゃんは?」って訊いてきたから、「姉さんから聞いてると思うけど、体調悪くてしばらく病院に居たんだよ~。」って答えておいた。
「もう治ったの?」「ん~、まあね。100パー元気じゃないけど、だいぶ良くなってきたよ。」

今でも死にたくなるなんて、口が裂けても言えないじゃん。

「それはそうと、ドミノ・ピザの英語が気になってるらしいじゃん。あれが分かったら英検3級は楽勝だよ! 頑張れー。」と伝えたら、「読んで! 読んで!」と急かすので、まずピザボックスの方を読んだ。
"Introducing the all-new, much easier to use Domino's app. Filled with exclusive deals and coupons, enjoy the best value in the app!"
これだけ見ても、割とブロークンな英語だ。
主語も be 動詞も無いし、ECC で学んでるとはいえ、中学2年生に上がったばかりの英語運用能力では、パッと見じゃ難しいかもしれない。

この場合、Introducing の前に "We are" が、後ろには "you" が来るべきだけど、それぞれ省略されてること、"all-new" は日本語で「全く新しい」「生まれ変わった」を意味する決まり文句だということ、"app" はスマホの普及で application software が短縮された結果生まれた表現だということを伝えた。
プラス、Introducing は現在進行形の省略用法であって動名詞じゃないことも付け加えた(ここ大事)。

そしたら、"Filled with exclusive deals and coupons," の和訳は? って言うんで、あえて「どう訳すのが良いと思った?」と訊いた。
filled with sth で「~に満ちている」の意味は辞書に載ってたから分かるけど、「ドミノアプリがエクスクルーシブなディールとクーポンに満ちている」って言われても意味わかんない……と。

なるほどね、exclusive も deal も文脈によって意味が変わるから、分かりにくかったんだろう。
とくに exclusive はあんまり良い意味で使われないことも多いし。
「独占的な、排他的な、お高く止まっている」っていうネガティブなニュアンスも併せ持つ単語で、特に書き言葉での文脈を考えた場合、別の語(limited 等)で置き換えたほうが良いこともある。

一方で、ホンダのインサイト(クルマね)のように、上級グレードに「エクスクルーシブ」という名を与えてるケースもある。
この場合は当然、良い意味(高級な・富裕層に向けた、の意)で使われてる。
ま、実際のクルマは、ものすんごく安っぽいけどね。内装なんか「ザ・合成樹脂」感が丸出しだし。「これのどこがエクスクルーシブなの?」とホンダのディーラーで思わず口にしてしまったほど。

あとは deal の訳。だいたい英和辞書の1番に「取引・協定・契約」、2番に「(経済・外交)政策」と出ている。
でも、この場合、前に exclusive が付いてて、しかも複数形の deals だから、俗語としての「お買い得商品」という訳を当てるのが適当だろうね。食べ物以外、服や家電などでは「セール品」「処分特価の品」という意味でも deals を使う。
アメリカの元大統領トランプ氏は、口癖のように「これは我が国にとって良いディールになる」と連発してたけど、それとはちょっと違う意味合い。
まとめると、「会員限定のお買い得ピザとクーポンが満載!」のアプリ、という意味になるんじゃないかな。

……ということを話したけど、やっぱりちょっと難しかったみたい。
まあ英検3級を受けるのに、ここまでの英文解釈は必要ないというか、これが出来るレベルなら2級が目指せるね。

実はここからが本題。
サイドメニュー(ポテトやチキン)の箱に書かれている英語を目で追った時に、心に引っ掛かりを覚える箇所があったんだ。
"Domino's is obsessed in using only natural ingredients. Not only for great taste, but because we want to deliver 'safe and delicious' pizza to all pizza lovers."
まあ簡単に訳すと、「ドミノ・ピザは天然素材だけを使うことにこだわります。それは単なる美味しさのためだけでなく『安全で美味しい』ピザを、全てのピザ・ラヴァーズにお届けしたいからです。」となる。

勘の良い方ならもう分かってると思うけど、僕の心に引っ掛かってしまったのは "be obsessed in" という言い回し。
obsess という語は、多くの場合に受動態の文で使われる。そして exclusive と同じく、前向きなイメージがあまり感じられない。
ほかにも be obsessed with [about/over/by] sth というバリエーションがある。
前置詞の違いはあれど、意味はほぼ同じで、「~に取り憑かれたような」「~にのめり込んで」「~にとらわれて」という訳になる。
obsess, obsessed, obsessing, obsessional, obsessive と変化していくんだけど、あれ……。

僕の第一愁訴である強迫性障害(OCD)って、Obsessive Compulsive Disorder の略なんだよなぁ。
強迫観念にとらわれる障害、か……。これまであんまり意識してなかったけど、obsessive も compulsive も同じ意味。
「うな重」ならぬ「強迫重」。それだけ深刻な病ってことだよね。だって一度罹患したら治らないんだもん。
実は compulsive は名詞としての用法で「強迫性障害の患者」という意味になる。しかも可算名詞。
たとえば Sexual compulsives(性的強迫症患者たち)のように使われる。

モヤるというか、凹むというか。
“ドミノ箱” によって、図らずも現実を直視させられた。
なんか、ちょっと怖くなっちゃったな。
新しい強迫症状「ドミノ・ピザが頼めない」が発動したりして。やだ、そんなの。
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(小瓶主)
こんにちは、小瓶主です~

「強迫」ってさ、もともと漢字の文化圏には無かった概念だと思うんだよね。
日本語でも「経済」「情報」「環境」「金融」これらみんな明治以降に日本に輸入された概念でしょ。
(「金融」は「金を融通する」と解く場合もあるけど)

なんなら「白書」もそう。英語の white paper を直訳しただけ。
中国語でもさ、欧米発祥の概念、たとえば global は「環球」だし、hard disk drive は「硬盤」。白書と同じ。

不安過度障害、実際にはそうなんだけどねぇ。
DSM-5-TR では不安症のカテゴリーから独立したけど、たぶんそれは obsessive かつ compulsive だから、ほかの不安障害とは別次元だよねっていう事だと勝手に思ってる。

よく「わかっているけどやめられない病」って紹介されることが多くて、各種の依存症と、強迫性障害を同列に語る人がたまに居てさ。あれ止めてほしいなって。
根本的に違う病だし。

「うつ病は心の風邪です」なんて、どっかの製薬会社が広めちゃったせいで、症状が過小評価される温床を作っちゃった。あの責任は重大だと思う、個人的には。

しかし「強迫性障害」にしても、旧称の「強迫神経症」にしても、強迫っていう訳語を当てた人は誰なのか知りたいなぁ。図書館で調べてみるかな。

ななしさん

“強迫”と訳してしまっている日本語がおかしいのかも。“熱中”、“夢中”、“過度な集中”そんなニュアンスの言葉を選んでもよかったのかもしれない。
“不安過度障害”とか。凡人意下な私のセンスではこれが限界。

もしも言葉で患者を救えないのなら、こう呼び始めた医者や学者のせいじゃん。
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