私には、好きな人がいた。
転校してから同じクラスで、あまり話したことはないけれど、見ているだけで嬉しかった。
楽しかった。
いつか、私もあの人と横に並んで歩いたりするのかな、なんて妄想していた。
あの人と隣の席になった。嬉しかった。
話す機会が増えた。
少しは私のことを知ってもらえているかな、とか考えながら、必死で顔の赤さを気にする日々が続いた。
そんな時に、事は起きた。
私は、トイレから帰ってきて教室に戻ろうとした時。
その時だ。
見てしまった。
あの人と別の女の子が、2人だけでキスをしていた。
そこには、とても割り込めない、2人だけの空間があった。
ある、雨の日だった。
何故だろう。
あんなに大きかった雨の音が、いつの間にか聞こえなくなって、代わりに自分の心臓の鼓動が、私の頭の中で鳴り響いていた。