7月に母が亡くなった。
ゴールデンウィーク後半ごろからなんとなく体調不良を訴えていたものの原因はわからず、結局病名が判明して2週間足らずで逝ってしまった。
本人の希望通り、自宅で看取った。
私は未婚で父は約30年前に他界、ずっと母と暮らしてきた。
と言っても、いわゆる「仲良し母娘」みたいなのではなく、喧嘩もよくした。
住まいは賃貸だったので、私一人で払える家賃のところへ引っ越さねばならず、引っ越した。
県外に住む弟が「実家が無くなるので帰省した時に泊まる場所が欲しい」というので、1つ部屋の多い物件を探したら、必然的にボロいアパートになった。契約社員が払える家賃で探すとなると仕方がないか…。
また私と同じく未婚の兄とは、お金のことで大喧嘩してしまった。
一人での引っ越しは思った以上に大変だった。
引っ越した日の夜は、ベッドに横になった時「あー、ホントにひとりぼっちになっちゃったんだな」と思った。
引っ越した2日後だっただろうか、近所の駅前で車椅子に乗った白髪の高齢女性と、その車椅子を押す女性の姿を見たとたん、なぜか心が揺さぶられた。歩きながら涙が出てきた。
母も最後の2週間くらいは歩くことができず、車椅子を使っていた。
自力で起き上がれなくなっていたので、車椅子に乗せるのも一苦労だった。
「あの頃は大変だった」という気持ちを思い出したのか、車椅子の女性に母の姿を重ねたのか、自分でもわからない。
でも車椅子を押したときのリアルな重み・抵抗感をまだ私の腕は覚えていて、私の心に刺さった。
お葬式以来、泣いたことなどほとんど無かったのに、家についてもまだ涙が出た。
その後、所用でもう一度外出したけど、また歩きながら涙が出てきた。
その日以来、仕事帰りの電車の中でもふと「わたしももうお母さんのところに行きたい」などと思ってしまう。
引っ越しの荷ほどきも途中で止まったままだ。
私に平穏な当たり前の日常はやってくるのだろうか。