いつでも私を励ましてくれた友達が遠くへ行ってしまう。
幸せな人生のために。
だから喜んであげなきゃいけない。
彼女はとても優しくて明るくて素敵な人だから、幸せになってほしいと思ってた。幸せになるべき人だと思ってた。
ずっと不幸だったから、今度こそ幸せになれるはず。
頑張れ!応援する!
そう言いながら私は寂しさに苛まれている。
会おうと思えば簡単に会える距離にいた。
でも、これからはそうはいかなくなる。
これまで彼女が私を気に留めてくれていたのは、私が不幸だったからだ。
彼女も不幸で、だから他人事と思えず、私を大切にしてくれたからだ。
妹のように思ってる、と。
でも行ってしまう。
色んな問題があって、それをうまくクリアする必要はあるけれど、彼女の心はもう決まっている。
誰だって幸せになる権利はある。今は自分のことで頭がいっぱいなのも分かる。
私は横から励まし続ける。
でも心のなかでは、今までどおりに何も変わらないで欲しいと叫んでる。
違う。
幸せになってほしいの。それは本当にそう思ってる。
でも幸せになったら、彼女は私を忘れる。
それが寂しくてたまらない。
辛い時、前に進めない時、いつも私を励ましてくれた。
数年間、私が色々大変で連絡をいっさい絶っていた間、交流が途絶えていたけれど、その色々が落ち着いた時、やっぱり彼女に会いたい!一番会いたいと思う人は彼女しかいない!と、勇気を出して連絡したらものすごく喜んでくれて。
数年ぶりで再会、また交流が繋がった。
嬉しかった。
でも変わらないものなんて何もない。あらゆることが変化していく。
彼女から家を出ていく計画を打ち明けられ、驚いた。
遠くへ行っちゃう。
せっかくまた楽しくお付き合いできると思っていたのに。
彼女は幸せになるために引っ越す。そこには彼女を待つ人がいて、彼女がこれまで心の内を明かしてきてくれた私は必要なくなる。これからは、その人が彼女を受け止めてくれる。
私は変わらずここに一人取り残される。
幸せになって欲しい。心から願っている。
けれど寂しくて寂しくてたまらない。
離れてしまえば疎遠になる。
新しい環境に落ち着くためにしばらくは連絡が途絶えるのを覚悟してる。
そしていつしか疎遠になり完全に途絶える。
子供の頃から分かってるパターン。
転校する時、「絶対、電話するからね」「手紙送るね」そう言い合っていても、みんなそれぞれの目前の暮らしの中でいっぱいいっぱいで、遠く離れた相手のことなど後回しになり、そして忘れていく。気がついた時にはもう何年も経っている。
それはお互い様だから仕方がない。
大人になってからの親友は得難いもの。
新たに知り合った仲良しも何人かいるけれど、その人たちも目に「この人とどれだけ仲良くなれるかしら?」と疑心暗鬼の色を浮かべているのが分かるけど、たぶんそれは私の目にも同じ色が浮かんでる。
一歩踏み出し、でも「あ、違う」と思ってしまうのが怖くて、互いに目で探り合いながら、どうでもいい話題で「私たち気が合うね」と笑い合うだけ。
握手しようと差し伸べ合った手は、こぶし一つ分離れたところで止まったまま伸びていかない。大人になってからの友達ってそういうもの。
傷つくのが怖くて、どうせすぐまた離れ離れになるのが寂しくて、表面は仲良くしていても、どういう人生を背負っているか分からないから、もしかしたら突然牙を剥く人かもしれない、なんてたくさん疑ってしまうから。
だからこそ、大切な大切な友達だった。
本音を話し合える。
互いをいたわり合える。
その人が遠くへ行ってしまう。
その人を待つ人がいる場所へ。
私は一人取り残される。
寂しさを受け止めてくれる人は誰もいないから、一人で自分抱きしめるしか無い。
唯一の心を明かせる友達だったから。
寂しくて寂しくてたまらない。
心が空っぽになりそう。
目覚めてまず最初に虚しさに襲われて。
こんなことなら目覚めたくなかった。