きっと恵まれた環境なんだと思う。
でも、私にとっては、地獄みたいな環境だ。
「普通」になりたい。
両親が離婚した。親権は母が取ったようだ。私も兄も、母親に引き取られた。
その時は、別にいいと思った。
片親の家庭なんて星の数ほどあるだろうし、隠すという選択肢もあったから。
でも、それは単なる勘違いだったのだ。
父親が居ない分、母はいつも働きづめ。家事は私と兄が分担して行うことになった。
当時の私は小学3年生。まともに家事のやり方を知らない。
それを見かねた母と兄は「常識人化計画」と言って、私に様々な知識を植え付けた。
それは、小学3年生には少し重いもので。私は他の子と世界の見方が変わってしまった。
学校生活は悪くないものだったけど、どうしても他の子たちとの差が見えてしまっていた。
知りすぎてしまった。知りたくないことばかり植え付けられて。クラスメイトが知性の欠けた猿にしか見えなくなった。
でも、楽しいと思える時だってあることも事実で。
私はただ、「普通」になりたいだけ。
でも知ってしまえば、知らない頃の自分にはなれない。
時が経てば追いつくのだろう。それでも、これから何年間も、あの子たちと過ごしていける自信が無い。
今はもう、6年生になる。
卒業の季節が近づいてきている。大抵大きな行事の時は、あの子たちとの差を感じやすい。
死にたいという感情が、私の中を満たして、狂わせる。
卒業したら、死んでもいいかもしれない。
私を狂わせたあいつらに、一泡吹かせてやろう。
でも、まだ死にたくない。
相反する感情は、私を苦しめる。
まだあの子たちを見ていたい。どう成長していくのか。何を思って、何を信じて生きていくのだろう。
私には、夢がある。
「Vtuber」という、馬鹿げた夢。
自由に、楽しそうに活動しているあの人たちが、眩しくてたまらない。
この前母に、勇気を出して話してみたこともある。
もちろん、否定された。
その時は、凄く苦しかった。
私にとってそれは、生きる希望でもあったから。
だから。私は中学生にはならない。
「普通」になれないこの環境で、私は幸せになれない。
あいつらに、あの憎たらしい母と兄に、一矢報いるために。
私は中学生にならない。
中学生になる前に、私はきっと死ぬから。
あの子たちが門を出る瞬間は見れないけど、私はあいつらに復讐する。
これは「普通」になりたかった私が、あいつらに復讐するだけの、くだらない話である。