今日から憂鬱な学校が始まる。いやだ。嫌いだ。こなきゃよかった。仮病でも使って帰ろうかな。でも面倒。考えていると朝礼が始まった。
「今日は転校生がいまーす」
転校生…いやだ。頭の中でため息をつくとドアの開く音がした。渋々前を向く。すると朝コンビニ近くの公園にいた女の子にそっくり。
「斬島千夜羽です」
きりしまちよは…ちよは?夢に出てきたよな。でも夢に出てきた「ちよはちゃん」は随分と幼い声で、今この教壇に立っている「ちよは」は大人しい声をしている。夢に出てきた「ちよはちゃん」とは全く違う。確かに時が違うっていうのもあるけど多分今目の前にいる「ちよは」は幼少期も随分大人しい方だったんかな、と勝手に妄想してしまった。
「えー、それじゃあ斬島、席は花槌の隣ね。あそこの空いてるとこ」
うっわ、隣だ。最悪すぎる。足音をあまり立てずに歩いてきた子は、清楚な見た目で腰まで綺麗に伸びた真っ黒い髪を耳にかけながら座った。
–––、綺麗な髪だな。なぜかわからないがこの子の雰囲気を知っている。横目にその子を見ていると千夜羽はこちらをゆっくり見て、笑った。
「どうしたの?」
ずっと見てたのがバレたか?でもなんて言うの、なんでもなくないけどなんでもない。言葉にできない。喉につっかえてうまく言葉が出てこない。
「え、あ、えっとー、綺麗な髪だなって」
下を向きながら言って、ゆっくり目を合わせた。
「そんなー、緊張しなくてもいいのに。というか、君…はなづち、くん?朝会ったよね」
顔覚えられてた!なんだか胸が痛い。鼓動が速まっている。
「ああ、あの公園でしょ」
「やっぱりー」
千夜羽は返事をしたら両手で頬杖をついて前を向いた。
「今日、その公園一緒行こうよ」
急な提案に俺は驚く。別にいいけど俺で困らないのかな。
「いいけど。なんで俺なの?もっとうるさいあいつらとかの方がいいんじゃない?君みたいな積極的な人は」
「あなたじゃないといけない理由があるの」
「…そう」
会話が途切れてチャイムが鳴る。授業が始まった。
途中まで聞いていたが、眠くてつい眠ってしまっていた。それにしても奇妙だな。またあの「ちよはちゃん」が出てきた。でも、断片的な場面で何がなんだかさっぱりわからない。昨日見た夢は優しいとか言ってたけど、今回のは病院だったっけ。それに声が少し成長していた。幼い、甲高い声じゃない。成長したんだな。とはいえ、中身までは覚えていない。はっきりわからない。病院の中であること、「ちよはちゃん」の声はしなかったこと、情報はそれぐらいだ。
「帰ろ?」
不意打ちのように急に声をかけられて少しびっくりした。俺は軽く頷いて席を立った。
公園に着く。夕方、あたりは赤く、雲は紫に焼けている。世間話を交わしていたらいつのまにか街灯がついていた。
「ねぇ魁斗」
「名前…知ってるの」
「まぁそれは後でわかるよ。私さぁー、あれに似てると思うんだよね」
千夜羽が「あれ」と指さしたのは満月だった。
「あれ…満月?」
「そう」
空を見ている千夜羽を見る。その顔はなんだか悲しそうな、どこか寂しいような、そんな顔だった。
「今日はこれでおしまい、またね」
千夜羽が道路の方を向いて公園から出てすぐの曲がり角を曲がってしまって、もう千夜羽は見えなくなった。俺はまだ突っ立っている。公園についてからの出来事が不思議すぎて、頭の整理が追いつかない。最近はずっとこんなことばかりだ。今日も家に帰ったら早く寝よう。
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こんかいはここまでー。
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