学校で各班で調べたことを黒板に書くっていう授業があった。
とある問題児の班には、空いているスペースに落書きがしてあった。
それはとあるトゥレット症候群のYouTuberさんをバカにした言葉だった。
そのYouTuberさんがよく声に出てしまう言葉を書いていた。書き終わったあとに大袈裟に真似しながら「あんなのネタにしてくださいって言ってるようなもんだろwww」と言っていた。
俺の兄もトゥレット症候群である。
だからずっと見てきた。
入試を別室で受けていること。
受験した大学のひとつでは、受かったとしても症状次第で大学を退学しなくてはならないこと。
公共機関での冷たい目線。
診断されてからしばらくの間酷く症状が出ると母や父が対応を分からず叱っていたこと。
今も大きい声のチックが出るとあからさまに嫌そうな顔をして俺に当たってくること。
本人がずっと苦しんでいる姿。
それでも周りに支えてもらいながら生きている姿。
妹として彼を近くで見ていたからことどれだけ辛い思いをしたのか、苦労してきたのかがわかる。
ある人は言っていた。チックはくしゃみのようなものだと。くしゃみは自分の意思でどうにかできるようなものでは無い。無理に抑えても限界は来る。
あのYouTuberさんもたくさん動画で語っていた。
チックのせいでお店を出禁になったこと。
多額のお金を払って手術を受けても治らなかった人もいること。
沢山の誹謗中傷があること。
トゥレット症候群について知って欲しくて、理解して欲しくて、同じ思いで苦しんでいる人を救いたくて動画を公開している人の事を俺のクラスの問題児はバカにした。
自分のことを棚に上げてバカにしていた。
先生は落書きにしか思っていなかったのだろう。何も言わなかった。
周りの人もほとんどがくだらない落書きのようにしか見ていなかった。
本当は見た瞬間書いたやつらと先生を殴りたかった。そしてどうしても言いたかった。
「自分のことを棚に上げてバカにするな。彼はお前らなんかがバカにしていいような人ではない。彼の苦労も知らずにお前らが好き勝手言っていい訳が無い。お前らがその人のことをどう思うかはお前らの自由だが、バカにしていい権利なんてないし、彼がバカにされていい訳もない。
じゃあお前らは自分のことをどこの誰かも分からないような人にバカにされて笑われてもいいんだな?あんなのネタにしてくださいって言ってるようなもんだろwwwって言われていいんだな?お前らがなにかする度に同じことしてやろうか?声かけした時、発言した時に黒板に書いて同じこと言って笑ってやろうか?やられていいからバカにしているんだろう?
先生もですよ?知らなかったらほっといていいんですか?違和感を何も感じないんですか?彼らがしたことは侮辱です。それに気がついて指導するのが先生じゃないんですか?」
言ったら俺が親と先生達に絶対に説教されるな。
どうしようもなく頭にきて動けなかった自分が醜い。
ネットに関わるということは誹謗中傷などは付き物だ。
今の俺もきっと誰かにとっては不愉快な内容を書いているのかもしれない。
俺の夢も誹謗中傷まみれの世界だ。きっと性別について誹謗中傷されながら俺は生きなければならない。覚悟はしているしできているつもりだ。
それでもスルーしきることは難しいのだろう。
きっと傷つくことも沢山あると思う。それでも必要としてくれる人のために生きると思う。
でも、母親もそのYouTuberさんのことを笑いのネタに使っているのを黙って見ているのも辛い。
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