嫌いだ、お前
水溜まりを蹴飛ばす
ちぎれそうになりながら
また見上げてくるお前が
嫌いだ
消えてしまえ
僕は強くない
苦しい
それなのに
靴底を叩きつける
跳ね上がるしぶきが裾を濡らす
悔しい
にじむ視界が
波面に消えていく
誰からも、
見放されたお前を
僕だけは守りたかった
鉛色のあしもとから
見上げる暗い瞳
しあわせでありたかった
願いは同じだったのに
いつからだろう
お前を
お前の命を
憎んでいた
生きている理由が欲しかった
悲しみに名前が欲しかった
雨粒ひとつ、ふたつ
そうしてお前は此処にいる
消えてしまいたい
そう言って泣くんだ
泣きたくなんかないのに
そう言って泣くんだ
つまらないものを、
つまらなくしてるのは誰?
少しおどけて
笑ってみせる
ありきたりな言い方だけど
前に進むのは怖い
かえでが一枚、転がりこんで
僕を見放して
お前は言った
立ち上がる、見上げる
雨はとっくに上がっている
僕は
お前を見捨てない
hatose