「星守る犬」という漫画を最近読みました。数年前に話題になった本だったそうで既読の方もいらっしゃると思いますが、なかなか面白い本でした。作者あとがきというのが巻末にあったのですが、それがまた面白くて、内容としてはどうにもつまらない世の中になったものだなということでした。
一通り読み終えた後、世界一有名な通販サイトのカスタマーレビューなるものに目を通したのですが、それを見て「なるほど、なんだかつまらない世の中になったものだな」と思いました。
生きている中で疑問や不可解に行き当たってもちょっと調べればそれらしい解答を見つけられる、少なくとも大きな間違いとは考えられないような結論に行き着ける、今の社会の仕組みというのはほんのちょっと昔に比べても随分と正しいものを共有できるようになった様に思います。
それはそれで結構なことなのですが、人というのは分別がつき始めると自分が振舞うように相手に振舞ってほしいと考える、もしくは思ってしまう傾向がどうしても強くなる様で、それが酷い理不尽だと気付くのにはむしろ難しい世の中になったのだなと、そんな風に感じました。
「星守る犬」は主人公である「おとうさん」がそんな理不尽に追い詰められる話です。
「おとうさん」というのはこのお話にあって悲劇の主人公で不幸の中心人物なのですが、実は救いでもあります。彼は自身に向けられる理不尽をそっくり引き受けて誰を恨むでもなく生きていきます。端から見るとどうにも「しょうがない」おじさんである彼は事ある毎に「しょうがねえなぁ(という台詞は無かったようには思いますが)」なんて考えながら犬と生きていきます。「しょうがないことなんか無い」という正しい人と世の中を「しょうがねえなぁ」なんて思いながら何を恨むでもなく生きていきます。
正しい人にとっては愚かな生き方なのでしょう。件のレビューはついた星の数に関係なくおとうさんを追い詰める内容で溢れていました。そんな様子を私は「つまらねぇな」と思いました。
商業的な理由なのか作者の「しょうがねぇなぁ」が発動したのか実の所はよくわかりませんが、後に発行された続編はこれでもかというくらい「しょうがねぇなぁ」に溢れていて物書きという職業もなかなか大変なものだなと考えました。
という私のつまらん話でした。
余談
落語の笑い話も人情物も「しょうがない人」と「しょうがねぇなぁ」で溢れていたりするのですが、あれを愚かな話だの時間の無駄だのと断じる正しい人をあまり見かけないのも不思議なものだと、懲りない私のつまらん話
少なくとも私は、生まれれてこの方「しょうがねぇなぁ」を使われたり使ったりしながら「しょうがねぇなぁ」に救われて生きている、そんな風に思います。
最後までつまらない話にお付き合いいただきまして有難うございました。