私が立てなくなるまで殴り蹴り叩き踏みつけてきたあいつ
理由は私がブスだから、らしかった
だから目に付けば追いかけ回すし捕まえては髪を引き抜くし顔にかかと落としをするし石をぶつけるし椅子で殴るのだと言っていた
こいつはいつかコロしてやると思っていた
親は見て見ぬフリだった
顔が痛くて満足に動かせないので、泣くのもやめたし怒るのもやめたし笑うのもやめたし喋ることも最小限にした
先生も面倒な家庭は嫌らしく見て見ぬフリだった
体育は体が痛くて動かせないので成績がいつも悪かった
勉強はノートに文字を書くのはつらかったけど、読むことはできたのでそれでそこそこに良い成績を取ることができた
それで見返そうと思った
それから私はいわゆる頭のいい人になった
私を散々にバカにしたあいつはクラスで中の下ほどの成績らしいので内心せせら笑ったが、顔が痛いので表情には出さなかった
ただ中学からあいつは何もしてこなくなった
それどころか「いいおにいちゃん」かのように振る舞いだした
こいつはいったい何なんだろうと思って避けた
やがて顔の腫れも引いてそこそこに喋ることが出来て表情も作れて友達も少しながらできた
あいつは普通科のある公立高校に行った
偏差値がお世辞にも高いとはとても言えないところで、そこで上位になったあいつは鼻高々で成績を見せてきた
親もそれを褒めちぎっていた
授業中に消しゴムのカスを投げて遊ぶ高校だということは知っていたので、のんきだなぁこいつらと思って見ていた
あいつはそれから公務員になった
親は安定した職に就いてくれてうれしいと喜んでいた
あいつはようやく家を出てくれた
私もそれはうれしかった
そしてあいつは家にろくに連絡をしなくなりあいつの未払いのローンや様々な請求が親宛に来るようになった
なぜかは知らないけど金がないらしい
親はそれをあいつの家に突き返していた
私はやがて家を出てそこそこの企業に就いた
貯金もそこそこに貯まって特に問題ない生活を送れている
あいつは今も頭を抱えて過ごしているらしい
いつかいつか私はあいつに笑ってやるのだ
ざまぁみろ、と私は笑うのだ
それであいつの怒りを買って死んだとしてもそれくらいの報復はしたっていいだろう
あいつへの恨みだけでほとんど生きてきたのだ
大切な友人だって出来たけれど、それでも恨みは積もっていく
あいつがなぜ途中で豹変したかなんて知らないし知りたくもないけど私が血にまみれた過去は変わらない
コロしなんかしないし殴りもしないけど笑ってやるくらい許されていいと思う
それで逆上されてまたコロされかけたりあるいはコロされたりしてもそれはそれでもういいと思う
あいつを笑ってやるくらいいいと思うんだ
もうあいつの前で笑ったって誰も責めないと思うんだ