高校生のとき、朝、自宅から駅に向かって歩いていたときのこと
靴を引きずって歩く足音がどんどん近づいていて、うしろに人がいるのは分かっていたけれど、気にしてなかった
「ザッザッザッ」
ふと気付くと足音が凄く大きくなっていてドキリとした
朝陽で真横におちた陰にそっと目を向けた
そこには私の真後ろに背を丸めた人の陰があった
顔が今にも私の腰にぶつかりそうな距離を保って歩いていた
ゾッとした
振り向いたら全力で走ってる男の人の背中があった
なんて瞬発力だろう
慣れてるのかもしれない
顔なんか全く見ていない
しばらく私はその人が離れていくのを見ていた
戻ってきたらこわいし、何が起こったのか、ぼんやりと考えていた
盗撮でもしていたのだろうか
その人は遠くて顔も見えないくらいの距離まで走ると走りながら何度も私を振り返って見ていた
あの時間帯にあの辺にいるということはきっと近くに住んでいるんだ
その1時間後、そのすぐ近くで不審者情報があった
絶対あの人だと思う
今でも、その道を通っているが、後ろを振り返らずにいられない
いざというとき、私を守ってくれるものなんて無いんだっていつも思い出す
誰か一緒に歩いてくれたらいいのに
街灯だって、防犯カメラだって付けてくれればいいのに、大都市の外れにはお金はまわってこない
つまらない仕組み
弱者に目を向けることは合っても、手を差し出す人はめったにいないということを大人になるにつれて知ってしまった
私も傍観者のひとり
そんな私だから明日いなくなっても、困る人はいない
そんなことばかり考えて歩いてる