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相手の立場に立てる人

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私の一番古い友人は、中学生の時に知り合った北欧人。
先日、彼女が暮らしている北欧某国にて、新聞に日本を特集した記事が出たそうだ。
世界に先駆けて急激な少子高齢化が進む日本の現状を分析、報告した内容だという。

先進的かつ充実した福祉国家として名高い北欧も、少子化の解消には成功していない。
昨日、久しぶりに彼女とオンラインでお喋りしていた時、この話で盛り上がってしまった。
「私も少子化戦犯の一人だから、偉そうなこと言えないけどね~」
と言う彼女は、いわゆるDINKS選択者の一人。
その理由は、大昔に聞いた。

あるとき、幼馴染と彼女は、ちょっとしたいたずらをして先生に叱られた。
彼女は、叱られて少し凹んだものの、反省して気を取り直し、すぐに元気になった。
ところが、彼女の幼馴染は、その日のうちに自宅マンションから飛び降りて亡くなってしまった。

人のものの感じ方は、個体によって大きく異なる。
このときほど、この事実を思い知らされたことはないという。
そして、この件をきっかけに、将来絶対に子どもを持つまいと決めたそうだ。

「私は鈍いから、今のこの世界でも、ほどほどに適応してなんとか生きていられる。
けれど、私の子どもがそうとは限らない。
先生の叱責を苦にして死んでしまった幼馴染と同じくらい、繊細な感性の子が生まれてきたら?
私は、苦しませるためだけに、その子をこの世界に強制的に連れてきたことになるだろう。
それは、道徳的、倫理的に正しいとは到底言えない。
そして、私は鈍くて、繊細な子の苦しみが理解できないから、子の幸せに責任を負う立場でありながら、子どもの気持ちに寄り添うことも出来ない。
そうしたら、私は、子どもに何と言って詫びたらいいのか」

彼女のご主人も同じ考えだ。
少子化問題、日本では何かにつけ「お金の問題」として扱われることが多い。
しかし、北欧では、「お金の問題ではなく、価値観の変容が原因」という理解が進みつつあるという。
この「価値観の変容」の内訳としては、子育てで自分のキャリアを棒に振りたくないというものもあれば、彼女が言うように、道徳・倫理的な問題という認識も含まれる。

彼女から幼馴染の方の話を聞いたのは、知り合って間もない中学生時代。
当時、私は、この話を聞いて、
「相手の立場に立つというのは、こういうことを言うのだな」
とひどく感心したものだ。そして、
「経験を経験知にするというのは、こういうことを言うのだろう」
とも思った。
ここまで相手の立場に立って考えられる人だったからこそ、当時、窮地にあった私を助けることが出来たのだろう。
十代で彼女のような人と友達になれたことは、生涯を通じて最大の幸運の一つだったと思う。

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