「もうインフルエンザは過ぎ去ったから、今日からマスクをつけるのやめるか。」
って思ったから、今日はいつもの使い捨てマスクを置いて学校に行った。
学校に着いて、階段を上がって、席に着いて、隣の席の子におはようって言って、リュックから教科書を出して、リュックのポケットから文庫本を出して、座って、読む。
それだけの時点で、わたしはマスクをつけてしまった。
家に置いて行ったはずのマスクをこっそりポケットに入れていたのには、やっぱり、人の視線が怖いっていう思考がわたしの中にあるからなんだと思うけれど。周りの人が朝からずっと笑顔なのに、自分は表情をうまく変えられないことが恥ずかしいからなんだと思うけれど。ちゃんと笑ったのは、いつが最後かな。学校で笑わなくなったのは、いつからなんだろう。このマスクをはずせるようになるのは、いったいいつなんだろう。
見られていないって分かってるのに、怖い。いつもうつむいて、前髪越しに人を見て。鏡があると必ず見て、乱れていないか確認する。学校には行きたくない。家から出たくない。部屋から出たくない。家にもいたくない。生きていること自体、恥。消えたい。こんなに苦しいなら、消えてしまいたい。わたしなんか、いなかったことになればいい。何が怖いんだろう。
人に迷惑かけることが?人に嘲笑われるのが?自分で自分を嫌うことが?自分を恥じることが?
全部か。
そんな奴、いなくてもいいし。いなくてもいい奴なんか、いない方がマシだろう。だからわたしは、はやくサヨナラしたい。それだけのことなのに、誰もそれを許してはくれないんだね。仕方ない。
明日のマスク、用意しよう。