何かを掴みたくて手を伸ばしていた幼い頃。
でも、それは捕まえることができなかった。
死を。
死んだらどうなるんだろう?
小さい僕は屋根に登って考えた。
屋根から下を見下ろす。
怖くない。逆に楽しい。
こんなんじゃ死なない。
この高さじゃ死ねない。
そんなこと考えた。
お風呂に水が溜まってる。
右にカミソリがある。
一瞬手がそっちに行く。
小さい僕は我に帰って手を引っ込める。
洗面所。
鍵を閉めたドア。
ポケットにはカッター。
ポケットに手を入れる、少し大人になった僕。
また我に帰る。
屋上への扉。
珍しく開いてる。屋上に柵はない。
目の前には誰もいない屋上への階段。
足が1歩進む。
また我に帰る。
横断歩道。
車が沢山走ってる。
信号は赤。真っ赤。
車が近づいてくる。少し前のめりになる。
誰か来た。
我に帰って信号待ち。してた振り。
気づいてない。
無意識で自殺をはかろうとする。
高い所、速いものがダメなのに。
事故ればいい。
「こいつら全部巻き添えにしちゃう?」
誰かが。悪い部分がいう。
それでもそろそろいいかも。
何回も我に帰る。
その度に辛くなる。
楽しかったのは、今日やっとみんなの前で堂々と1人で歌えたこと。
やっと出来た。聞いてもらえた。
信号のない渡り道。
クルマがくる。
今満足してる。
相手には悪いけど、いいよね?
1歩前に出た。
そしたら、体全体を柔らかい何かに押し返された。
そんでまた我に返った。
あれはなんだったんだろう?
でも、それのお陰で綺麗な夕暮れが見れた。
空っぽの心に少し染みる。痛い。
誰の言葉も響かない。
心配されても。もう遅いよ。
今更心配しても。
遅すぎた。
もう僕の心はいないから。
大切なものもなくなったよ。
ありがとう。僕から大切なものも人も取り上げてくれて。大切な思い出も作らせてくれなくて。
お陰で僕の心が空っぽになったよ。
どうもありがとう。
大切なものを失って我慢してたのに。
またとっていくから。
僕から大切なもの、人をとると心が無くなるよ。
もうほとんどないけどね。
もう、大切なものも人もほとんどなくなったよ。みんながとってちゃうから。
僕の大切なものをみんながとって言ったんだよ。
お陰で思い出も、大切なものも人もいないから、僕の心は空っぽだよ。
ありがとう。