半年付き合った彼がいました。
私たちはまだ学生で、おたがい目指しているものがあります。そのために、夏が過ぎたら疎遠になることはおたがいにわかった上での付き合いでした。
ですから、半年という短い期間でも濃い時間を過ごしたくて、たくさんの思い出を作ってきました。
そうして時間を過ごすうち、次第に彼は私のことを理解してくれるようになりました。どこにでもある普通のことかもしれませんが、捻くれ者の私にとって彼はとても貴重な理解者でした。私にだけ暗い過去を話してくれた彼にとっても、私は必要な存在だったと思います。
ですが、それぞれの夢に向けて頑張りたい時期がやってきてしまいました。支えあって一緒に乗り越えるなんて綺麗事に聞こえてしまうくらいに自分のことで精一杯です。
夏頃、心労からか彼は体調を崩しました。学校に来ていなかった日、私は心配のメッセージを送りましたが、「さぼっただけだよ」とのこと。嘘をつかれたことは初めてでした。心配をかけたくないというような暖かい嘘ではないことは、私にはすぐにわかってしまいました。
今まで、きついことがあったら頼ってくれていたのに、そのひとつの嘘が私たちの距離をすごく引き離したように感じました。
別れを切り出したのは彼でした。
光のない目で私の前にやってきて、「別れよう」と一言。理由を話してくれる気は無いようで、私の意見を聞いてくれる気も無いようでした。
彼はあのとき、ただ、夢の実現に疲れていただけかもしれません。別れたいのは本心ではなく、寂しかっただけかもしれない。今思えば、彼の光のない目を、私が救ってあげたかった。そう強く思うのです。
別れてしまった今、私ができることは何もありません。彼と出会った時を0とすると今の関係は確実にマイナスです。
確かに、今はおたがいに自分のことが可愛いので一緒にいるべきではないのかもしれません。自分の未来を掴むことで頭はいっぱいです。
もし別れずにいたとしても、彼が夢への荷物になってしまっているだろうなとも思います。
でも、一度わかりあった人を失うのは辛くないですか?
彼の痛みを知ってしまったのに、突然に見捨てなくてはならないのですか?
私と別れて、彼が元気にやっているのならまだ良いんです。
これで良かったんだって、私は自分の夢に集中しようって思えたのに、彼は毎日光のない目でやって来るのです。周りの友達にも心配されるほどに。休むことも増えました。もう私が心配していい立場ではないのに、気にかけてしまいます。
「別れよう」と言われたあの日、何か他にできることがあったんじゃないか。彼の決断を受け入れるのが私の役目だと思っていたけど、それは本当に彼の為になっていなかったんじゃないか。そんな思いでいっぱいです。
ずっと言えずにいたという彼の暗い過去にも、私が寄り添っていてあげたかった。
誰にも理解されなかった私と、ずっと一緒にいて欲しかった。
彼には私しかいないとか、私には彼しかいないとかは思いません。これが愛情ではなく情であることにも気づいています。
だけど、恋人という以前に、理解者であり、大切な人であった彼を、ただ手放すというのはとてつもなく辛いのです。
恋人とはいつか手放さなくてはならないものなら、ずっと友達でありたかった。理解者でありたかった。
でも付き合った頃は、こんなことになるとは思ってもいなかったので、タラレバでしかありません。
それでも、私でなく自分の未来を優先した彼を心から尊敬しています。
時間が解決してくれるまでの痛みを、ここで吐かせてください。
長々と失礼しました。