近々遠くへ行こうと思って、この手紙を書いています。
思えば小学生の頃からずっと遠くへ行きたいと願っていました。
胸にぽっかりと空いた寂しさの穴を、遠くへ行くことで埋められると信じていたんです。
両親は毎日忙しく、兄弟とは歳が離れていて話す機会も無かったから、
一人で家にいる時に、どこかの神さまに「遠くへ連れていって下さい」と祈ったりしていました。
私の成長と比例するように両親は不仲になり、私が高校に上がるころには毎晩大喧嘩。
いつ離婚してもおかしくない状態でした。つらい事を、話せる余裕はありませんでした。
そんな家には兄弟も寄り付かず、苦しい気持ちを誰にも話せないまま過ごしていく中で
私の心の寂しさの穴はどんどん深くなっていき、
ある日、「遠くへ行きたい」という思いは、「早く死にたい」という気持ちだったのだと気付きました。
どこかの神さまに「25歳までに死にたい」と祈るようになっていました。
いまはもう、25歳を過ぎました。
実際に何度か遠くへ行こうとして、でも行けずに、こうして過ごしています。
体に傷が残って、寂しさの穴は底が見えないほど深く真っ暗なものになりました。
最近、また遠くへ行きたくなっています。
数少ない大事な友達へ短い手紙を書いて、
どこかの神様に「今度こそ遠くへ連れていって下さい」と祈りながら、部屋を片付けています。