「おかあ、さん…?」
あ、確かに。ここからお母さんがよく行くスーパーやらコンビニやらが近い。息を吸って死を覚悟した。終わった。ごめん、ソラ。とミレが死を悟った瞬間にミレはグッと目を堪えた。いつまで経ってもお母さんからの攻撃が来ないため、そっと目を開けるとお母さんの手首を眼を赤くしたソラが掴んでいた。おまけにお母さんを殺気強く睨んでいる。
「ミレのこと、僕が止めてなかったらどうしてた」
青ざめたお母さんはゆっくりミレの方を向いた。
「あんたねぇ…」
「…」
ミレは「幻覚を見せてやろう」なんて思ってもないが、この時「能力」を発動してしまっていた。
「目…青いよ…?」
この時初めてミレは本当の想いに気づいた。
「私を育てたのはお母さんだった。その時の厳しい保護が私の感性を傷つけたんだ」
「は…?」
あまりに急なことすぎたからお母さんもびっくりしている。ミレは様子を変えずにお母さんに近づく。
「お母さんのせいだ…私がなんにも興味を持つことができなかったのは」
ミレはまるで別人格になったように殺気立った。
「ただただ学校に行くだけ。友達も作らないで。もうそんな日々疲れたんだよ」
「…!!」
ミレはこの時、幻聴、幻覚、妄想を視せつけ、精神状態を滅多刺しにした。数秒後、ミレは目の色を変えずに何処かへ行ってしまった。ソラは眼の色が元に戻っている。全てを失ったお母さんをチラチラ見て、ハッと我に帰った。
「ミレ、あいつどこ行った」
2人とも、覚醒した後はその時の記憶が飛ぶ。だからミレはまた自分の「本当に想うこと」がわからなくなるし、ソラはさっきミレのお母さんを傷つけようとしたことを覚えていない。だがミレはまだ覚醒状態なので覚えている。これからミレは「自分の想い」を傷つけたやつの精神を皆殺しにするつもりでいた。もちろん、次のターゲットは決まっている。今ミレが通っている学校の中の何人か。この時に学校に向かうのを妨害した奴も対象。と、次の瞬間、警察が補導しに来た。もう囲まれる前に目を合わせて幻覚を見せて片付けた。
「ミレ!」
「…」
静かに後ろを向くと駆け寄ってくるソラがいた。
「…邪魔すんな」
触れたら凍傷してしまいそうな目と言葉でソラに言った。ソラはこれからミレがすることを勘づいて、一歩下がった。すると、妨害が多かったのか、ミレが通っている高校の制服を着た人たちが多くすれ違う。その中に、友達と話すアカネの姿も見られた。アカネはこちらに走ってきた。
「あ、なんだー。ミレ全然元気そうじゃーん。今、インフルとか流行ってたから心配したよ」
笑いながら話す。ミレは全く笑わない。後ろからアカネの友達がひょっこり出てきた。
「あれ、オッドアイ〜?厨二病はちょっと年齢的に無理だわ〜」
めっちゃ笑われたミレは流石にキレて言う。
「…うるさい」
アカネの友達はミレが小学生の時から面識のある人で、その時からミレのことを貶してきた。だからターゲット。
「…殺してやるよ」
青い眼のミレはそっとアカネの友達を直視し、幻覚、幻聴を視せつけた。アカネの友達はミレのことを貶すわりに、グロテスクなものは苦手だった。だからそいつにはミレがアカネの友達に精神を滅多刺しにするのではなく、肉体的に刺殺している幻覚などを視せつけた。
「イヤ、ミレ、もう私そんなことしないから!もうやめて!死んじゃうから!!」
「ふん、何もしてないけどな」
ミレはせせら笑った。こんなうるさいハエはほっといて次のやつを殺しに行こうと思って笑いを収めてミレはその場を離れた。
一方ソラは、ずっとミレを見ていた。
「あ、ねぇ!!ちょっとそこの男子!!」
ソラがアカネに呼び止められた。何だろうと思って見ると、
「この子どうしたらいいですかね…」
そのことか。でも今はミレを追いかけたい。変に暴走する前に、止めたい。アカネとその友達をぼーっと見てるとアカネに打たれた。
「聞いてんの?!」
「…」
ソラは少しだけ気に障った。このままズバリと「もう命は助からないんじゃないのかな」なんて言ったらこいつにまた打たれる。打たれるだけじゃ済まないかもと思ってどうしたらいいか本当にわからなくなった。
「おい!!あたしの大事な友達が死んじゃう!助けろよ!」
息を吸って言った。
「もうその子の命はないと思うな。呼吸してると思えない。」
「…はぁ?」
アカネはソラを殴ろうとした。そろそろソラもキレ始めてしまって左の眼が赤くなった。アカネの腕を掴んでソラの体に引き寄せてから突き放した。
「…しつけぇな」
ミレとソラの行動を見ていた周りは静かで、中には止めようとするが勇気がなくてなかなか踏み出せずにいた人もいた。赤い眼のソラは歩き出した。ミレは大通りを抜けて、学校に向かっているはず。その後ろを追いかけた。流石に学校に入れてはならないと思い、ソラは自分の能力を使い、学校近くの電柱と銀杏の木を何本か倒した。流石にミレも止まった。だが諦めたようには見えなかった。ミレはソラの方を向き、幻覚を視せた。
「うっ…」
気持ち悪くなってソラはその場にうずくまってしまった。それでも、ソラとミレの暴走は止まらず、だんだん周囲も巻き込んだ紛争に発展してしまい、巻き込む周囲の範囲もだんだん広くなっていき、最終的には国の力も動くほどだった。ミレの精神崩壊を起こす能力、ソラの物理的破壊を起こす能力は制御を失ってしまい、歯止めがかからなくなってしまう。この時のミレとソラの頭の中は「目の前の奴さえいなくなれば自由に暮らせる」という妄想でいっぱいいっぱいだった。2人の眼は紫色だった。
あの時から2週間経った。色々な疲労が積み重なり、戦闘可能とは思えない状態に陥った2人は今がチャンスだと思い、ますます勢力が高まる。ミレもソラの能力がなぜか使えるし、ソラも同じようにミレの能力が使える。ただ、生まれつきのものではないために人の能力を使ったら代償が大きい。ミレは肉体的疲労をより感じるようになるし、ソラは自分の精神状態まで破壊されそうになる。お互いあまりその能力は使わずに暴走し続けていた。流石に国も「このままだと世界問題になってしまうかもしれない」と気づき始め、対策を立てる。ニュースなどで報道するが、ほとんどの家庭はテレビどころか家も破壊されてしまっていてニュースなど見れなかった。そもそもミレとソラの暴走から逃れるために逃げることに必死だ。とうとうミレとソラは国家勢力に潰されて捕まりそうになるが何とか逃げ切れている。そこで一瞬我に帰ったミレ。
「なにこれ…」
自分が引き起こしたものだとは考えられない。人々は幻覚と幻聴に苦しみ、行く道を失っている。そこをソラが突く。ソラに突かれたのにも関わらずぼーっと辺りを見回しているミレを見てソラも我に帰る。
「…」
そこを警察が抑えに来る。ただ、ミレとソラの覚醒状態は治っていない。紫色ではなくなったが、それぞれの色は消えていない。1時間ほど警察と乱闘した末、警察側の応援によって取り押さえられた2人。その2人はさっきとは打って変わってとっても静かだった。
警察によって確保されたミレとソラはそれぞれ別の部屋に取り込まれ、取り調べが行なわれていた。
「自分がしたこと、わかってるか?」
「わかってないです」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ」
「ふざけてないです、わかりません」
外を見ればわかるかと言われてミレとソラだったが、放心状態なのか人間の知能の低下なのかわからないが自分が何をしたかわかっていない。ただ、ミレとソラはこの世界を元に戻すために「能力」を使わずに回復させることを選んだ。ただ、失ったものは完全な状態で戻ってくるわけじゃない。死んだ人は戻ってこない。心の傷は必ず跡が残る。そういった精神的苦痛から、街は回復どころかどんどんと崩れ落ちる。ここでやっと自分たちが引き起こした大混乱に気づく。
「あ…あーぁ」
「わかったならよろしい、このままここに置いてってやるよ」
警察は帰ってしまった。ミレとソラは別々の場所にいたが、やがて死を決意した。またいつ暴走してしまうかわからない。今度はもっと混乱を招く範囲が広がってしまうかもしれない。そういった不安感から、死ぬことを選んだ。ミレはあらかじめ持ってきておいたカッターで首を切ろうとする。そこに1人歩いてきた人がいた。
「ソラ、何でここがわかったの」
「車で連れてこられたけど、前を走っていた車にお前がいたのが見えたんだ」
「あっそ、そんでー?あんたはどうすんの」
「死ぬけど」
「ならちょうどいいわ」
もう一度カッターを取り出して、首に当てる。ミレはさっさと首を切ってしまった。膝からガクッと倒れたミレを横目に、ソラはスマホを取り出して遺言のようなものを書いた。
ーーーーーー
ミレと僕が暴走したおかげで、こんなことになりました。最後に伝えておきたいんですけど、過去は帰ってこないんです。いくらミレが完璧な幻覚と幻聴で過去に戻ったように見えても、それはみなさんがこれまで過ごしてきた「過去」ではないんです。「仮想現実」です。いくら僕が能力を使って壊れたものを元に戻したとしても、失った心と人は帰ってきません。
これらのことを知っておいてください、いつか役立つだろうから。
あーあ、僕たちは地獄行きだねー、暴走の中で殺してきた人は天国行きだろうね。
どうかお幸せに。
ーーーーーー
スマホをスリープ状態にして、手に持ちながらミレのカッターを手に取り、ソラも首を切った。
ーーーーーーーーーーー物語 完
あとがき
やっと終わりましたー。文字数、えげつないよね。
ちょっとグロテスクな表現も多いですねw
「液体の味」や「つながった線」とは違って、少しファンタジーも取り入れたものを作ってみました!どうですかー?
ファンタジーの割にこんなグロテスクで人が死ぬとかいいのかって思った方、私も思いました。でもファンタジーでも、青春物語でも、ノンフィクションでも、方向性は何でもいいと思ってるんですよね(まだ6個ぐらいしか小説書いたことないくせに)
本当はもっと楽しげなものにー、とか思ってたんですけどやっぱり私の「病み好き」が出てきてしまって…w
この物語を書いていて、本当に楽しかったです。
あ、いや別にグロ好きとかではなく、作品を描いていてみてってことです。
深夜テンションってなんかこういうの書くのに最適だと思うのは私だけかしら(私だけです。)
さて、今回も苦手なんだけど得意なタイトル付けが始まりました。
本当にどうしよう。何も考えずに描いてきたからなぁ。えー…、えぇ?w
どうしよう。
あ、「Life or Fails」とか?それか「Kill with Capability and Past(wanna)」
うーん、なんか深夜テンションで英語のタイトルしかつけたくない、w
助けてーーーーww
チャットGPT使おう!(((((((((((
ここまで読んでくれてありがとうございました!
こんな変な私でもよろしくお願いします。
それでは、また。
2024/12/24(火) 8:30