僕は、前世に何をしていたのかな。
とんでもない大悪党だったのかな。
だから、よりによって人間に生まれてしまったのかな。
昔は、周りは新しいことだらけで、明るく、楽しいことばかりだった。でもそれは、僕があまりにも無知だったからそう思っただけだ。錯覚だったのだ。
実際は、人間関係は面倒で、でも関係していかないと生きられないから仕方なく関わって、でもやっぱり傷つけられて、傷つけて、自分の理性で考えて『より良い』未来のために絶えず努力し続けることを強いられて。
死にたいと思った。
でも、こう思ってることすら、世界にとってはどうでもいいことで。
僕なんていてもいなくても変わらないって言われてるみたいで、なんだか虚しくなって、刃物やロープを持つ手を下ろしてしまう。
今や人生百年時代らしい。とんでもないことだ。すでに単純計算で5分の1ほど終わってはいるけど、百年なんて、僕にとっては絶望的に長い。僕はさっさと死んでやり直したいと思ってるから。願わくば、人間以外のものとして生を受けられるように。
電車を降りる。人が多い。押し押されながら、電車から弾かれる。
階段を下りる。
階段を下りるのは苦手だ。なんだか、眩暈がするのだ。下りて、下りて、下りていくと、僕は一体何をしているのかと思う。手足の動かし方が分からなくなって、立ち止まってしまう。
後ろから舌打ちされる。
まあ、世界ってこんなものだ。
僕の気持ちとは関係なく、ひたすらに、無慈悲に進んでいく。
電車を乗り換えて、僕もまた進む。
四角い箱に詰め込まれて、息苦しい思いをしながら、それでも生きていかねばならぬのだ。この世に生を受けてしまった以上、そう簡単に死ぬことを許されない。
無機質に区切られた空は、どんよりと曇り、雨が降っていた。
どこを向いても救いはないんだね。
中は息苦しくて周りはみんなイライラしているし、外はどんよりして嫌な雨が降る。
世界がモノクロームに見える。
世界の圧力を強く強く感じる。
いっそのこと、この箱ごとひっくり返ってくれないものか。全部、全部ひっくるめて、まとめて、さようなら。
でも、そんなことは夢物語で、表面上は平和かつ停滞的、本質的には窮屈かつ憂鬱な日々は繰り返される。
あー死にてー。