空が白けてきた
私の好きな早い朝の青い時間がはじまる
カラスたちはもう目覚めている
遠くで今日も救急車のサイレンが鳴っている
外の世界からの音に耳を澄ませながら、
呼吸は浅く、密かに、
小さな部屋で体を丸めて、
私は今日も、わたしの内側にひたる
行きたいところがあった気がする
叶えたい夢がたくさんあった気がする
チャンスは何度もあっただろうに
手に入れたのは作りかけを放置した残骸だけ
空の青さを観察するいまの私に、
それでも奮い立てとわたしが囁く
やさしく囁いて、
怒って泣いて、
笑って泣いて、
蹴って叩いて、
私を責める
どうして繰り返すのかと問い詰めてくる
どうして進まないのかとしきりに首を傾げている
朝焼けの空をみて、私はひとりだと思う
空が、花が、街が、きれいだと思う
音が、光が、生命が、私を凍えさせる
何もないことは、安らかなのに
何もないことで、さみしくなる
ひとりを思いながら昼間は眠る
太陽に照らされると嬉しくて、
悲しいから、
疲れて眠る
夜を恨めしく思いながら、
真夜中を待ちわびて眠る
人々が憩う賑やかな夜の片隅で、
私は息を潜めている
わたしはここにいるよ、と念じながら、
誰にも気づかれないよう
視線を落として隠れて過ごす
賑やかな夜をやり過ごして、
沈む太陽を追う空の
深い青を観察する
一番好きな色だから、
少しだけ息ができる
だけど今日が死んでいく青だから、
私も息を止めてみる
青い時間はすぐに終わって、
いつの間にか目の前に立つ真夜中の黒が
わたしたちを誘惑する
黒がわたしに自由を錯覚させ
幸福と後悔を同時にもたらしてくれる
たくさん酔わせてくれる
それでも、
やがて黒を率いた夜は明ける
いちばんきれいな朝の青を呼んでくる
この世界が好きだ
青が私を生かしてくれるから
だけど上手に生きられないことを、
私は毎日青に伝える
生きていることが嬉しいと、
青を見るたび信じられる
だけど私は、
黒がなければ生きられなかった
愚かで無知な存在だった
昼間の白に灼かれてしまう
弱くて矮小な生きものだった
青と黒に縋りついて、
わたしたちはまだ、
白の元へは行けないみたいだ
わたしの内側を行き止まったら、
今日も生きよう
青と黒に縋って、白を羨んで